2025年03月04日 14時07分
2027年大河は「逆賊の幕臣」松坂桃李が江戸幕府のエリートを演じる
2027年大河ドラマ「逆賊の幕臣」の制作・主演発表会見に出席した松坂桃李
2027年大河ドラマ「逆賊の幕臣」の制作・主演発表会見が行われ、主演を松坂桃李、脚本を安達奈緒子が務めることが明かされました。
大河ドラマ第66作となる今作では、幕臣目線での幕末史の裏側を描き、松坂は“勝海舟のライバル”と言われた小栗上野介忠順(おぐりこうずけのすけただまさ)を演じます。江戸幕府の天才的エリート官僚だった小栗は、激動の幕末期において日本初の遣米使節として西洋の文明を体感し、帰国後に要職を歴任してさまざまな改革に貢献しました。
本作は小栗と国内外の諸勢力との外交・情報戦に焦点を当て、人間同士の腹芸や情報がその後の運命を左右するさまを描くスリリングな作品となっています。
作・安達奈緒子コメント
<執筆によせて>
《幕末》を書く機会をいただきました。幸甚とはまさにこのことです。
あまたの人が心惹かれ著述した日本の大転換期。史実も人物もあまりに鮮烈で魅力的なので、ひたすら実直に描こうと肝に銘じます。ただ─。
「誰の目で見るか、どこまで広く見るか」
人は見たいものだけを見る、とは昨今よく耳にします。勝者が歴史を作るとも。だとしたら敗者とされた者の目から見た情勢はそれなりに様相が変わるはずです。また一国の政変に焦点を絞らず画角を広くとれば、大洋大陸を隔てた遠い国々の複雑にからみあう意図が見えてくる。はたして。
今見えている出来事は本当に「今見えているままなのだろうか?」
小栗忠順という幕臣の目を通して見る《幕末》には強烈に《今》を感じます。
身分制を打破し、個の力を存分に発揮できる社会は繁栄をもたらす。けれど行き過ぎれば能力主義という新たな身分制になりはしないか。こぼれ落ちる者たちの存在がかき消されてはいないか。《公(おおやけ)》は本当に公共のために力を尽くしているか。世界規模で同時多発的に何かが起きている、うねる潮流の正体が見えない、止められない。
小栗も予感したはずです。「時代が変わる」。
小栗は持っている人です。身分、能力、機会に恵まれた変わり者の天才となれば鼻につく人物かもしれません。実際、無血開城の立役者、勝海舟は小栗を疎んじました。しかし小栗は官吏であり、いわゆるリーダーではありません。公の人です。そして小栗は持っている人だからこそ《個》として自由に生きることを自分には許さなかった。つねに公がなすべきことを考え、変容せざるをえない国を少しでも良くしようと邁進する。その高潔さと頑固さは清々しいほどで、混乱の世にあって希望たりえる人だったと思います。
松坂桃李さんはまさにそんな高潔さをまとう方です。小栗がどんな人だったかを想像するとき、勝手ながら姿がピタリと重なります。極限まで苦闘する幕臣がスッと実体をもって立ち上がってくる、顔が見えてくる、するとやはり思うのです。
「なぜ彼は処刑されなければならなかったのか」
小栗を知れば知るほど彼の死が悔しい。その死には謎があります。これを解明していく物語はこの動乱の時代をさらに心惹かれるものにしてくれるはずです。
《幕末》を書くことを許されたのは《今》だったからだと考えます。がんばります。
制作統括・勝田夏子コメント
<制作にあたって>
「……オグリって、誰?」そう思った方が多いと思います。恥ずかしながら私も最近まで知りませんでした。しかし、知れば知るほど「今こそもっと知ってほしい!」と思わずにいられません。
今、あらゆる価値観が音を立てて崩れ、分断と暴力が世界を覆っています。信じられないようなことが次々に起こるのを見ていると、文明の大きな変わり目に遭遇しているんだなと思います。幕末の人たちもこんな気持ちだったのかもしれません。そんなとき私は、小栗のことを考えるのです。
鉄道を見れば、莫大(ばくだい)な経費を調達する仕組みに興味を持ち、巨大な製鉄所を見れば、まず小さなネジの大量生産から考える。実にシャープ、かつ地に足のついた緻密さです。小栗は、時代の激変で混乱する社会を着実に明日、そして未来へとつなげるには何が必要なのか、至って現実的に考え抜きました。大言壮語はなく、終始一貫リアリスト。そして、いい意味でオタク。パンデミックの時とか頼りになりそうで、現代にこそ必要なヒーローのカッコよさを感じます。一方、数字に強いが空気は読めないという不器用さも人間的です。案外それを気にしてたりしたら面白いな、などと想像が膨らみます。
人は、今あるものを壊せば新しい何かが始まると期待しがちですが、ただ壊すだけでは社会は持続できません。小栗自身は「逆賊」の汚名を着せられ葬られましたが、彼が敷いたレールやまいた種は、日本の近代の礎となりました。
そんな彼の物語を、当代きっての実力派・安達奈緒子さんの骨太な脚本と、全幅の信頼がおける松坂桃李さんの品格あるお芝居とで、スリリングかつ胸熱にお届けできるのは望外の喜びです。
2027年は「逆賊の幕臣」、皆さまどうぞご期待ください。
©NHK