「百姓貴族」作者・荒川弘先生が語る大自然への向き合い方「人間はクマの〇〇」!?

隔月刊「ウィングス」（新書館）にて連載中の「百姓貴族」は、農家出身であり「鋼の錬金術師」（スクウェア・エニックス）や「銀の匙 Silver Spoon」（小学館）の作者でもある漫画家・荒川弘先生の農業エッセイマンガ。明るく楽しい農家の生活はもちろん、自然と向き合う苦労や、食にまつわる社会問題も学べる作品です。

2024年10月からアニメ2期も放送中の「百姓貴族」の魅力に迫るべく、荒川先生に筆記インタビューを行いました!!

――「百姓貴族」の連載を始めたきっかけについて教えていただけますか？

新書館のイシイさんと、まんが好きトークをだらだらしていた時に流れで私が農業していた時の小ネタを話すとイシイさんが面白がってくれまして、「そういえばガチめの農業エッセイまんがって見ないですね」「やりますか」みたいに軽く始まりました。

――作品の中でもさまざまな農業機器が登場しますが、作画や資料集めが大変だった機器はありますか？　

だいたい実家にある物、近所の農家さんにある物なので、実物の写真がすぐ撮れるのが強みですね。しかしそれをどう使うのかをアシスタントさんに説明するのが大変です。

――ちなみに荒川先生が好きな機器はあるのでしょうか？

好きな機器……というか道具は牛用ブラシ。持っていくとウシもイヌもうれしそうにしてくれるので。

――作中でも屈指の人気を誇るキャラクター（？）の荒川父ですが、「うちの父親は少し変わっているのかも？」と思ったのはいつ頃でしたか？

もげそうな指を自力でくっつけた時ですかね……。何故病院に行かない!? と思ったと同時に、人体はすごいな、とも思いました。

――「非農家」の声を代弁しているイシイさんですが、荒川先生が一番驚いた、あるいは面白かった「非農家らしい」反応はありますか？

平成・令和の世に「蝗害（こうがい・イナゴによる作物等への食害）っていまだによくあるんでしょう？」と訊かれた時。

農家にとっては「身近な食材」も一般人とは異なることも

――荒川先生が「農家に生まれてよかった！」と思ったことを教えてください。

金は無くても飢え死にしない！

――18年という長期連載になっていますが、話のネタに苦労したりはしていませんか？

1話のテーマに沿って、バランスよく起承転結をつなげるのは毎回苦労しています。単独の小ネタはまだまだたくさんあるのですが、テーマがバラバラな物なので使いどころが悩ましい。

読者からの要望でネタを選ぶときもある

――荒川先生が再び農業に携わるとしたら、何か作りたい作物はありますか？

お米！ 作物以外だと土地のすみっこでブタを2〜3頭飼いたいです。

――「百姓貴族」がアニメ化されたことで、以前とは違った新しい反応などは感じられていますか？

小さい子がリピートして見ている！　という感想を沢山いただきました。掲載誌がやや大人向けなので、読者層が広がるのは素直にうれしいです！ アニメ化本当にありがたい！

――連載中に結婚や出産をしたことで農業や食について考えが変わったことはありますか？ 

こどもって予想以上に野菜食べてくれない……。

――社会的に害獣による農作物の食害やクマの出没など、自然と人間の境界の交わりが問題視されていますが、荒川先生が理想とする「人間と自然の関わりの形」についてどうお考えですか？

「大自然に生かされている」ではなく「大自然に殺されずに済んでいる」の精神で日々過ごしています。環境保全も大自然に殺されないためのもの、人間はクマのエサ、とも思っています。 

――「農家出身の漫画家」という、肉体的にも精神的にもタフな印象の強い荒川先生ですが、「これは自分にはできないな」と思う職業はありますか？

弁護士！ ゲスの極みのような人でも一応相談は受けなくてはならないので。話してるうちに「……貴様をきざんで畑の肥やしにしたい……」と口に出してしまいそうなので。 

家畜の世話や野菜の育成だけでなく、販売スキルも高い荒川先生。

――では最後に「推し活を応援するメディア」である推し楽にちなみ、荒川先生の今の“推し”を教えてください。 

この季節は新米推し!!!

取材・文：福嶋哲平（t-press）