2024年11月08日 04時02分
レポート
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ミュージカル「プロデューサーズ」ゲネプロでの、濵田崇裕&神山智洋
WEST.の濵田崇裕&神山智洋が主演するミュージカル「プロデューサーズ」が、本日11月8日より東京・東急シアターオーブにて開幕。前日の7日にはマスコミ向けの取材会と公開ゲネプロが行われました。
「プロデューサーズ」は、1968年の同名映画をもとに、2001年にブロードウェイで舞台化。その年、アメリカ演劇界で最も栄誉ある賞と言われるトニー賞で12部門を制覇した “最強のミュージカル・コメディー”です。2005年には再映画化もされ、長く愛され続けてきました。
今回、ジェームズ・グレイが演出を手掛ける最新版に主演するのはWEST. の濵田崇裕&神山智洋。お互いを知り尽くす2人の息ぴったりなパフォーマンスはもちろん、どのような“新しい”化学反応を起こすのかにも注目が集まっています。
濵田が演じるのは、かつてブロードウェイでヒットを飛ばしたが、今は落ち目のプロデューサーとなってしまったマックス・ビアリストック。神山は、マックスのオフィスに派遣される気弱な会計士のレオ・ブルームに扮しています。レオは帳簿を調べる中で、成功した芝居よりも失敗した芝居のほうが利益を生むことに気付きます。するとマックスは、わざと失敗作を作り、出資者から集めた資金を騙し取る計画を立てるのです。いつかプロデューサーになるのが夢だったレオを巻き込んだ計画が実行されて——。
マックス&レオの詐欺興行のために集められた最悪の脚本家、最悪の俳優、最悪の演出家を演じる面々も曲者ぞろい。ヒトラーをこよなく愛するドイツ人のフランツに岸祐二、スウェーデン出身で英語が苦手な女優の卵・ウーラには王林が扮し、演出家のロジャーを新納慎也、そのアシスタントのカルメンは神里優希が演じます。ここに出資者の老婦人ホールドミー・タッチミー役の島田歌穂と友近がWキャストで加わり、ユーモアたっぷりに極上のエンターテイメントが繰り広げられるのです。
ゲネプロ前に行われた取材会には、演出・振り付けのジェームス・グレイ、濵田崇裕、神山智洋、王林の4人が出席。冒頭のフォトセションから濵田と神山は「スマーイル!」「ニッコリー!」などと声を掛け合ったり、カメラのシャッター音を口真似するなど、会場を和やかな雰囲気に包み込んでいました。
本格ミュージカルは初となる濵田は「不安はない」とキッパリ。これまで多くのコメディー作品に関わってきた経験が自信につながっていたようで、「いろんなジョークを交えつつ(のお芝居)で、あっという間の稽古でした」と楽しみながら初日を迎えられると充実感を滲ませていました。約9年ぶりのミュージカル出演となる神山はWEST.10周年のタイミングで濵田と二人でミュージカルをやれることに安心感があるとし、「コメディー(の演じ方)で迷った時には、コメディーをいっぱいやっている濵ちゃんに頼む(笑)」と濵田に絶対の信頼を置いている様子。カンパニーの空気感もすごくいいと微笑み、「関西弁も飛び交っているので、東京にいるけれど関西にいるかのような感覚」とニッコリ。楽しくて柔らかい空気が作品にもいい影響をもたらしてくれたと感謝した神山が「せりふは関西弁じゃないです!」と笑わせると、王林も「私は標準語をしゃべれないのですが、ウーラはスウェーデン語で訛っているのでこのままです!」と続くなど、チームワークの良さをトークでも発揮していました。
ジェームスは役者としての濵田、神山、王林の魅力を「まず、キレイ!」と絶賛。ミュージカルが初めての人がいるとは思えないほど三人のダンス、演技、歌が素晴らしいとし、さらに、三人が(自身の役をよりよくするための)ネタを持ってきたことにも驚きを隠せない様子。オリジナル(元になった作品)の振り付けや演出の楽しさを味わいつつ、自分らしさを持ってくるのでとても味わい深い“東京だけ”の公演が出来上がったと満足の表情を浮かべたジェームスが「ブロードウェイ版、映画版など、何度も携わっている作品だけど、これはコピーではなく、このカンパニーならではのユニークな作品になりました」と付け加えると、会場は期待のこもった拍手に包まれました。
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本作での共演を通して絆が深まったと感じたことはあるか、との質問に神山は「デビュー前から数えると20年くらい一緒にいる」としみじみ。濵田は「神ちゃんが楽屋にコロコロを持ってきて掃除していて。こんなに(楽屋を)キレイにしてるんだ」という発見があったと明かし、神山の掃除姿を再現し笑いを誘う場面も。神山は「楽屋は休む場所。ホコリがあるとめっちゃ気になるので」とコロコロ持参の理由を明かしニコニコ。お互いをよく知るからこそやりやすかった芝居として「叩くシーンでは最初から遠慮なしにいける。お互いこうしたらいいんじゃないかっていうのが分かっているから。あうんの呼吸っていうのかな」とうれしそうに報告。二人、そして王林を加えた三人のシーンでの息ぴったりの掛け合いやツッコミについて、ジェームスは「コメディーのタイミングを教えることは出来ない」とこの組み合わせだからこそとの褒め言葉に、三人は同じタイミングでおどけたように踊り出すなど、ここでも絶妙なコンビネーションを見せていました。
濵田は「シアターオーブでは、来てくださる皆さんをシアターオーブの別空間にお連れします。帰るときにはちょっと華やかな気持ちになれるように、頑張りたいと思います」と宣言。神山は「素晴らしいセット、音楽、カンパニーがステージの上でキャラクターとして生きて、胸を打つような感覚を一人一人に届けられるような作品になっていると思います。誰一人欠けることなく、最終日までカンパニーが一丸となって頑張りたいです!」とメッセージを送っていました。
一幕では落ちぶれてしまったマックスの今のシーンから始まり、マックス&レオの出会い、ウーラの出現、そして詐欺興行のための資金集めまでの物語が展開します。高い歌唱力を誇る濵田&神山は、期待通り、いや期待以上の歌声を響かせます。濵田はマックスが過去にもてはやされていたことを嘆き歌う「THE KING OF BROADWAY」で哀愁を漂わせたかと思えば、続く神山とのデュエット「WE CAN DO IT」ではこれから始まる“詐欺興行”に向かっての野心やちょっとした悪さを滲ませるなど、変幻自在に歌声を操り、歌唱力の高さを見せつけます。神山は最初のデュエット曲ではレオらしく自信のなさを表現しながらも、実は心に秘めた“プロデューサーになる”夢への思いを滲ませ、「I WANNA BE A PRODUCER」でその感情を爆発させます。途中からコーラスガールたちも登場しタップを披露するなど、華やかなパフォーマンスで観るものを惹き込んでいきます。
「ALONG CAME BIALY」ではマックスとレオが部屋から飛び出し、老婦人たちとのキュートなコラボレーションで魅せます。マックスは黒のスーツから赤い衣装に着替え、歩行器を使ったダンスやブランコの登場でステージは一層華やかで躍動感に満ちた空間に。無事に資金をゲットし、マックス&レオの詐欺興行が始まる! という高揚感が高まったところで、休憩を挟んで二幕へ。
二幕でも濵田&神山は息のあったコンビネーションを繰り広げます。詐欺興行「ヒトラーの春」のオーディションから始まり、マックスとレオの予想に反して興行は成功。しかし興行の成功はマックスとレオの計画失敗を意味していて……。計画の失敗から、事態は急変。果たして二人の運命は!?
二幕はレオが歌い、ウーラと二人でダンスをする「THAT FACE!」からスタート。真っ白に塗られたマックスのオフィスの壁一面に映し出される“顔”も見どころです。詐欺興行「ヒトラーの春」のオーディション会場や、初日に向かう劇場前には、ロジャー、カルメン、フランツをはじめ、多くの舞台関係者が加わり、賑やかなパフォーマンスを披露します。
「WHERE DID WE GO RIGHT?」は舞台の成功を嘆き歌う楽曲。落ちぶれたプロデューサーとプロデューサーを夢見る会計士という二人なら、本来なら成功を心から喜びたいはず。その葛藤も加わった心の機微を絶妙に表現する歌唱技術にも注目。「BETRAYED」では、マックスがレオの裏切りを知り、嘆きと怒りに満ちた歌声を響かせます。裁判所のシーンでは、マックス、ホールドミー・タッチミーら老婦人たちに遅れて、レオとウーラの姿が。再会シーンでは複雑な感情で二人に芽生えた絆のようなものを確かめ合うように「TIL HIM」を歌い上げます。そしてクライマックスには「PRISONERS OF LOVE」。囚人なのにとても華やかな衣装で、歌い踊るマックス&レオ&囚人たち。さらには囚人&ウーラ、ロジャー、カルメンの組み合わせでも同じ楽曲を歌い踊り盛り上げます。華やかなパフォーマンスが終わると、中央には再び、マックス&レオの姿が。ここからは濵田&神山が、顔を見合わせ、声をそろえ、ピタッとポーズを決めて幕を下ろしました。カーテンコールでは観客へのメッセージを「プロデューサーズ」らしいユーモアを交えた歌と踊りでお届け。取材会でも話題になったように、“東京らしさ”を感じるオリジナリティー満載の公演でした。
濵田、神山、それぞれのシーンも見せ場はたっぷりですが、やはり本作で注目したいのは二人が一緒に登場するシーン。目線、手足の動き、首を傾げるタイミング、驚くような表情を見せるときなど、合図をしてそろえているのではなく、自然にそろっていると感じられる二人がシンクロして動く瞬間、神山が話していた“あうんの呼吸”は随所に感じられます。コメディーの塩梅も絶妙で、開演前にジェームスから「笑い時には声を出して笑っていい」というコメントをもらっていてよかったとホッとしてしまうくらい、思わず声を出して笑うシーンにあふれています。濵田&神山だけでなく、濵田&王林、神山&王林、濵田&島田、新納&神里の組み合わせでのコンビネーションも素晴らしい! この組み合わせに一人、また一人と加わっても、抜群のシンクロを見せてくれるカンパニーでした。
取材・文:タナカシノブ
撮影:古賀良郎
2024年11月8日(金)~12月6日(金)
会場 東京都 東急シアターオーブ
スタッフ
脚本:メル・ブルックス / トーマス・ミーハン
音楽・歌詞:メル・ブルックス
オリジナル演出・振付:スーザン・ストローマン
日本版演出・振付:ジェームス・グレイ
翻訳:徐賀世子
訳詞:森雪之丞
出演
濵田崇裕 / 神山智洋 / 王林 / 新納慎也 / 神里優希 / 岸祐二 / 島田歌穂 / 友近(Wキャスト) and more!
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