2025年02月25日 13時17分
レポート
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「難しいから楽しかったのかも」と、執筆を振り返った加藤シゲアキ
2月24日、加藤シゲアキが著書「ミアキス・シンフォニー」の発売記念マスコミ発表会に登場しました。明日26日に発売となる本作は、加藤が雑誌「anan」で2018年4月〜2022年6月まで不定期連載をしていた小説に、大幅な加筆・修正を加えた作品です。連載開始から7年の月日を経て、作家として大きく成長を遂げた加藤が、“愛”というテーマに挑みました。
大作を書き上げた感想について聞かれた加藤は、「この作品は僕の作家人生の半分近くをかけて作り上げました。本当に僕の分身のような作品が生まれたなと思っております」と振り返ります。連載は「anan」編集部の依頼から始まったそうですが、連載当初、加藤にとって“ある事件”は起きたのだそう。「事件と呼ぶほどのことでもないんですけど(笑)、依頼をいただいた時に、僕はすっかり書き下ろしの短編だと思っていて。でも実際に打ち合わせをしたら、書き下ろしではなく連載だったんですよ。そんな感じである種見切り発車と言いますか、『それでもやる!』という形になって不定期連載をすることになりました。まずはタイトルを決めて、1週間分の内容を決めて……と、手探りの状態から始めたのでその分時間がかかったんですけど、スタートを切ってからどういう風に作品を作っていくのか考えていくという経験はあまりしていなかったので、僕自身もこの作品から学ばせてもらうものがとても多かったです」と、当時を振り返りました。
タイトルにある“ミアキス”とは、犬と猫の祖先と言われる動物なのだそう。加藤は、「最初に小説の内容を、とある出来事をA面とB面の違う側面から見つめるという内容にしようと決めたんです。で、タイトルを決めるときに、今はもう絶滅してしまったけど“ミアキス”が犬と猫の祖先だった動物だということで、一つの動物から犬と猫というすごく相対的な存在が生まれたというのが、この小説の枠組みと重なるところがあるんではないかと思いました。シンフォニーは交響曲という意味ですけど、この作品はすごく多くの登場人物が出てく群像劇なので、そういった登場人物たちのハーモニーみたいなものが生まれるんではないかとう期待を込めてタイトルをつけました」と、作品名に込めた思いを明かしました。
本作は友達、師弟、親子、きょうだい、恋人などさまざまな“愛”を描いた作品です。“愛”というテーマに至った経緯については「どうですかね。自分で『愛をテーマにした』って言うのもちょっと照れくさいんですけど(笑)。僕は30代をこの作品と過ごしたので、なんですかね……『やっぱ愛だよな!』って大人になって思ったんですよね。というのもありますし、当時読んでいた『愛するということ』というエーリッヒ・フロムの作品がありまして、そこからもインスパイアを受けて書き上げたというのもあります。初めから愛を見つめていたわけではないんですけど、登場人物を深掘りしていく間にあらゆる愛が浮かび上がってきました」と、少し照れながらもしっかりと語りました。
また装丁のイラストは、加藤たっての希望で画家のヒグチユウコが担当。「僕自身、元々ヒグチユウコさんのファンだったので、個人的にヒグチユウコさんが描く“ミアキス”を見てみたいと思いました。『難しいけれどお願いしてみましょう』と編集と話して依頼したところ、快諾していただいて……! ヒグチさん自身も“ミアキス”を描いてみたかったと思われていたそうで、(連載をスタートした)7年前には想定していなかった出来事というか、奇跡みたいなものがあるんだなと思いました。“持ってる作品だな”なんて、自分でも思ったりしてます。実際に描かれたものを見たら、やっぱり期待をはるかに超える作風でした。元々ファンなので作風は知っていたつもりですけど、ヒグチさんにお願いして良かったなと思いました。あまりにも素晴らしいので、小説が負けてしまわないかと不安になるくらいです」と笑顔を見せました。
「連載を続けていくことは大変だったのか、それとも楽しかったのか」という報道陣からの質問に対しては、「どちらもありますね。すごく楽しかったし、難しかったです。難しいから楽しかったのかもしれませんね」と力強く語ります。連載していた作品を大幅に改稿して一冊の本にしたことについては、「話を広げてるあたりは楽しいんですけど、いよいよ単行本を目指してそろそろ形にしなくてはいけないなというあたりは、やっぱり難しかったですね。連載だから成立していた短編だったので、本にするにあたってかなり書き直しました。レゴで作った車を一回バラバラにして、スーパーカーを作るみたいな(笑)。車ではあるんですけど、かなりアップグレードさせていくっていう。同じパーツを使ってアップグレードさせていくような部分が本当に大変でした。こういう作り方をするのはきっとこの先もうないんじゃないかと思ってるんですけど、それだけ実験的に作れたからこそ、自分にしか書けない作品ができたなとも思っています」と、作品への熱い思いを明かしました。
本作のテーマにちなみ「加藤さんにとって“愛”とは?」という質問には、「“自分自身を信じることなんだな”と、書いていてすごく思いました。やっぱり愛するということを突き詰めていくと、どんな時も相手を思うということに関して、最終的にやっぱり自分が試されているような状況になるので。自分に愛があると信じて進むことからしか始まらないんです。僕自身、この作品が面白くなると信じて、これでいいのかって迷うこともあるんですけど、始めたからには自分の力を信じるっていうことがすごく重要でしたね。改稿作業がすごく大変で……。7年前の自分がほんっとうに下手くそで(笑)。『君は何をやってるんだ!?』みたいなことを思いつつも、それだけ自分が成長できているんだなということも実感して、本当に多くのことに気付かされた作品でしたね」と、自分を信じて書き続けたことで、この7年で作家としてめざましく成長を遂げたことについて語りました。
また、「anan」で不定期連載をしていたことに対して周囲の反響について聞かれると、「僕のまわりの男友達で『anan』の定期読者が多分そんなにいないので……(笑)。僕の周りからの反響っていうのはあんまりなかったんですけど、ファンの方からは『すごく楽しみにしていた』と反響をいただきました。長い期間の連載だったので、途中で僕のファンになった方や、僕の作家のファンになった方というのもいらして、『読み直すことができないから早く単行本化してほしい』という声が届いていたんです。女性向けの雑誌ということで、僕も一応読者層を女性と想定して作っていたので、すでにすごく多くの方から反響をいただいております。ファンの方々からも『やっとこの作品を読むことができてうれしい』という声が届いています」とファンからの反響に喜びの表情を見せました。
取材・文:紺野真利子
撮影:古賀良郎
2025年2月26日(水)発売
マガジンハウス刊
大学入学のために博多から上京したが、鬱々とした日々を送っているあや。大学で同級生のまりなと出会ったことで、思いがけない事件が起こる。和食の料理人の師弟の過去、兄弟間の愛憎、元夫婦の思いなど、いくつもの物語の先に待つものは……? ミアキスとは犬と猫の祖先と言われる動物。ミアキスから分岐して生物が進化していくように多様な人物たちが現れ、壮大なシンフォニーを紡いでいく。2018年から2022年まで全16回にわたって雑誌「anan」で不定期連載されていた「ミアキス・シンフォニー」に大幅な修正や加筆を加え、愛とは? という問いを描く新たなる小説として刊行。
©末長真・マガジンハウス
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