2025年02月28日 12時00分
インタビュー
2025年02月28日 12時00分
インタビュー
心に残っている手紙や、35年後の理想の自分の姿を教えてくれた重岡大毅さんと上白石萌音さん
十分な教育を受けることができず、文字の読み書きができないまま大人になった西畑保と、保をそばで支える最愛の妻、皎子(きょうこ)。実在した夫婦の35年を綴った心温まる映画「35年目のラブレター」 で、二人を演じるのは笑福亭鶴瓶さんと原田知世さんです。
今回は、そんな西畑夫妻の青年期を演じる重岡大毅さんと上白石萌音さんに、今作の魅力や撮影秘話、お互いの魅力などたっぷりとお話しいただきました。約9年前に、映画「溺れるナイフ」でも共演していた二人。すでに信頼関係があったからこそ演じられた大事な場面や、お互いが尊敬するそれぞれの才能とは……。
――映画「35年目のラブレター」では、笑福亭鶴瓶さんが演じる保さん、原田知世さんが演じる皎子さんの若き日を演じていますが、オファーを受けたときの心境を教えてください。
重岡大毅 ビックリしました(笑)。僕は鶴瓶さんが大好きですし、共演もさせていただいたことがあるので、声をかけていただけてすごくうれしかったんですが……鶴瓶さんって、“鶴瓶さん”じゃないですか(笑)。
上白石萌音 唯一無二ですよね。
重岡 そうなんです。唯一無二やし、みんなが鶴瓶さんのことを好きで。保さんを通して、鶴瓶さんと同じ役を演じることにプレッシャーも感じました。スタッフさんに「なんで俺やったの?」って聞いて回りましたもん(笑)。そしたら、“笑った顔が似てる”と言われてすごくうれしかったですね。
上白石 私はまず最初に「原田さんと全く顔が似ていないからどうしよう!」って思いました。でも私も原田さんのことがずっと大好きなので、すごくうれしかったです。原田さんが出演されている作品も見ていましたし、歌声も大好きで。
――台本を読んだときはどんな印象を受けましたか?
重岡 絶対に演じたいと思いました。
上白石 私もです。
重岡 そうだよね。こんなにすてきな台本が自分の手元に届いたこともうれしかったですし、この物語をどうしても伝えたいって思ったんです。
上白石 このお話が実話だということにもビックリしました。それを頭の中に入れたまま読むと、より味わいが深くなって。それに私は関西出身ではないので、セリフのやり取りに“めっちゃ関西してる!”って思って、演じられることにすごくワクワクしていました。
――お互いの役者としての印象を教えてください。
重岡 天才ですよ、天才! 最初に本読みをしたときに、もう原田さんやったもん。そのときに“すごい!”って思ったんです。関西弁もすでに完璧やったんですよ。あまりにも完璧だし、気持ちも伝わってきて、「なんやねん、こいつ!」ってちょっと腹立ってきて(笑)。
上白石 なんでやねん(笑)!
重岡 これこれ! 俺、すごい焦ったんですよ。原田さんがまとっている雰囲気や空気感、オーラがその時点で出ていて、「俺も頑張らないと」って。
上白石 それで言うなら、私も腹は立ってましたよ。
重岡 なんで⁉
上白石 重岡さんと「溺れるナイフ」で共演したときに、すごくすてきなお芝居をしていて「なんだ、この人!」って思っていたんです(笑)。実はこの本を最初に読んだときに、キャスティングを聞いていなかったんですが、重岡さんだったらいいなって思ったんですよ。
重岡 うれしい!
上白石 だからこそ、本読みのときも「そうそう、これこれ!」と思いながら聞いていました。あと、お国の言葉で話しているときも……。
重岡 関西弁も標準語もお国の言葉だから(笑)。
上白石 すごくイキイキしていて。その姿に、鶴瓶さんがしっかりと見えたんです。それだけでもすごくすてきなのに、重岡さんは監督さんに「もう1回やらせてもらっていいですか」って言ったんです!
重岡 俺、大汗かいていて。そういうときは焦っているときやねん。もっとここは違う言い方があるのではと思ってお願いしました。
上白石 その気持ちがすごく保さんだなって思ったんです。その瞬間、「この人についていこう」って思いました。
重岡 俺もキャスティングで上白石さんの名前を聞いたときに安心しましたね。共演したのが2016年で、それから9年が経っているんですが、続けているとまたいい作品で共演できるんだなって思いました。
上白石 以前から思っていたんですが、なぜあんなにセリフを自分の言葉にできるんですか?
重岡 あまり考えたことないな……。でも、誰かになるという考えよりも、自分でしゃべっている感覚が大きいかも。逆に上白石さんはどう?
上白石 私は相手の言葉をよく聞く、よく見る、もらえるものをしっかりと全部もらうということを大事にしています。
重岡 わかる。30代になってから、1人では作品は作れないことをより実感したかな。
上白石 スタッフさんをはじめ、いろんな人が準備をしているからこそ、最後に役者が決定付けてしまう怖さはすごくありますよね。
重岡 そう! いろんな人の思いが乗っているからこそ、プロフェッショナルでありたいなって思うよね。
――劇中で演じた保さんと皎子さん夫妻から刺激を受けたことはありましたか?
上白石 すごくすてきなご夫婦ですよね。“この人の役に立ちたい”という気持ちがどれだけ強くて温かいかということも感じましたし、そう思える人がいることが生きがいとなり、自分の心身を支えてくれるので、夫婦って、愛っていいなと思いました。さらに、気持ちをちゃんと伝えることも大事だと学びました。
重岡 大事やな。僕は、何かを始めるのに遅いことはないと感じました。生きていると、“あのときもっとこうしていたら”と思うことってありますよね。でも、今の自分を信じたい気持ちもあるんです。そうやって、自分のことを信じるきっかけをこの作品からいただきました。
――保さんが文字の読み書きができないことを皎子さんに伝える大事なシーンは、緊迫感あふれるものでしたが、あのシーンの撮影はいかがでしたか?
重岡 かなり緊張しました。でも、上白石さん、スタッフさんを含めそこには信頼できる人しかいなかったので、「よろしくお願いします!」という強い気持ちで演じていきました。
上白石 私はそばで聞いているだけでよかったので、何かの準備をしたわけではなかったんです。ただ保さんの言葉を聞いて、表情を見ていれば、皎子さんとしてそこにいられたので、その状況にしてくれた重岡さんがすごいなと思っていました。
重岡 何事も、打ち明けるってすごく勇気がいりますよね。一番大事な人に言えないことがあるって、保の心をずっと蝕んでいたと思うんです。生きていると、ファイトしないといけない瞬間ってありますけど、まさに保はそこがファイトする場所だったんです。
上白石 緊張感がすごかったですよね。セリフはもちろん、静かな間や、言葉を探している時間、何を言ったらいいかわからない沈黙、すべてが真実だなと感じていました。
重岡 あのときはみんな、頑張ったな!
上白石 あはは!
©2025「35年目のラブレター」製作委員会
2025年3月7日(金)公開
貧しい家に生まれ、ほとんど学校へ通えず文字の読み書きができないまま大人になった西畑保は、皎子と運命的に出会い結婚。半年後、ひた隠しにしてきた秘密が露見し別れを覚悟する保だったが、皎子の「今日から私があなたの手になる」という言葉に救われる。保は退職を機に、どんなときも支えてくれた皎子へ感謝のラブレターを書く決心をし、夜間中学に通い始める。5年以上の月日が経ち、なかなか書き上げられずにいたラブレターがようやく形になろうとしていた頃、皎子が病におかされ……。
出演
笑福亭鶴瓶 / 原田知世
重岡大毅 / 上白石萌音
徳永えり / ぎぃ子 / 辻󠄀本祐樹 / 本多力
江口のりこ / 瀬戸琴楓 / 白鳥晴都 / くわばたりえ
笹野高史 / 安田顕
スタッフ
監督・脚本:塚本連平
配給:東映
©2025「35年目のラブレター」製作委員会
「35年目のラブレター」メインビジュアル
1992年生まれ。兵庫県出身。所属グループ・WEST.では作詞作曲も手掛ける。天真爛漫で親しみやすいキャラクターを持ち、バラエティーだけでなく俳優としてもドラマや映画に数多く出演。映画「溺れるナイフ」(’16年)では多くの映画ファンから注目を集め話題に。ドラマ「#家族募集します」(’21年)、「雪女と蟹を食う」(’22年)、「単身花日」(’23年)、映画「禁じられた遊び」(’23年)、「ある閉ざされた雪の山荘で」(’24年)と主演作多数。自然体な芝居に定評がある。
1998年生まれ。鹿児島県出身。2011年に第7 回「東宝シンデレラ」オーディションにて審査員特別賞を受賞し、芸能活動を開始。映画「君の名は。」(’16年)、「スタートアップ・ガールズ」(’19年)、「夜明けのすべて」(’24年)、ドラマ「恋はつづくよどこまでも」(’20年)、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(’22年)ほか数々の作品に出演。2023年、舞台「千と千尋の神隠し」とミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ」で第30回読売演劇大賞最優秀女優賞を史上最年少で受賞。翌年には舞台「千と千尋の神隠し」のイギリスでの海外公演が大成功を収める。現在、主演ドラマ「法廷のドラゴン」(テレ東)が放送中。
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