鞘師里保が得た「お芝居で思い切る心」俳優、アーティストとしてつかんだ手応え

水曜ドラマ23「めんつゆひとり飯2」の放送が10月2日（水）23時よりスタート（BS松竹東急 / 毎週水曜23時放送）。前作に引き続き主演を務める鞘師里保さんに、シーズン1の撮影エピソードを振り返ってもらいながら、仕事への向き合い方やソロアーティストとしての活動、ファンとの関係性について話を伺いました。

4コマ漫画「めんつゆひとり飯」（著：瀬戸口みづき / 連載「まんがライフオリジナル」竹書房刊）を実写ドラマ化し、2023年4月から放送された「めんつゆひとり飯」の続編となる本作。鞘師さん演じるズボラOL・面堂露（めんどうつゆ）が、万能調味料「めんつゆ」を駆使して、手間をかけずにおいしい料理を作るグルメコメディーです。

原作「めんつゆひとり飯」 (c)瀬戸口みづき／竹書房

アイデア満載のめんつゆレシピはもちろん、個性あふれる登場人物たちによるクスッと笑える会話のやりとりも作品の魅力。シーズン1は鞘師さんにとってドラマ初主演作であり、俳優としての存在感を示す作品になりました。あれから1年。俳優とソロアーティストを並行しながら、活躍の場を広げる彼女が今感じていることとは？

自分のキャラと違う役柄だと思っていたのに、まんまだねって（笑）

――「めんつゆひとり飯2」放送決定のお知らせでは「正直想定していませんでした。笑」とコメントされていましたね。

自分が主演を務めている作品がシリーズになって驚きました。そもそも、シリーズ作品に参加することが初めてなので。ただ、シーズン１の放送中も放送終了後も、続編を希望する声をたくさんいただきました。放送後に配信を見て作品を知ってくださった方もいらして。だから、こうして続編が実現してありがたいなと思いました。

――周りからの作品の反響を受けて、いかがでしたか？

歌手活動の際は、歌もダンスもしっかりパフォーマンスすることを心がけているので、露のような自然体のキャラクターを演じるのは「意外に思われるかな？」と思っていたんです。ところが、自分のことをよく知ってくれている人からは、「まんまだね」「すごく合っているね」と言われて、逆に複雑な気持ちになったりしました（笑）。

――シーズン1を振り返って、印象に残っているレシピや自分で作ってみたレシピはありましたか？

シーズン1はずっと京都で撮影をしていたので、自炊する機会がなかったんです。だから、家に帰ったらまずは一番簡単にできるものを作ろうと思っていて、クリームチーズをめんつゆに漬けて食べる「チーズのめんつゆ漬け」を真っ先に作りました。自分の家で、露として過ごしてきた生活の延長線を感じられて、「これこれ！」という感じでしたね（笑）。あと、「夏野菜のめんつゆマリネ」も作ったんですけど、マリネという海外のレシピを日本にしかないであろう調味料のめんつゆで作るというのがすごく印象的でした。想像よりおしゃれな味つけになり、驚きましたね。

――食事シーンでは、鞘師さんの表情からおいしさが伝わってきました。あの表情は素の鞘師さんですか？

そうですね（笑）。おいしいという気持ちを、包み隠さずに表したらああなりました（笑）。

――食べるシーンが多くて大変だったりしませんでしたか？

ガッツリした料理もありましたが、めんつゆで作るレシピなのでさっぱりしていてパクパク食べていました！撮影が終わったら、そのまま休憩時間も食べたりして。シーズン2では、みんなで分けて持ち帰ったりもしています。

――料理シーンの前に差し込まれる、「めんつゆの世界」でのダンスシーンも独特の世界観で印象的ですよね。

最初はどう表現するのか想像つかなかったので、「めんつゆの世界ってなんなん!?」って思っていました（笑）。すごくシュールなんですけど、“あれがあってこそ”な作品になっていったので、これまで培ってきた身体能力で渾身のダンスを踊っています（笑）。今回もまた面白い感じになっていると思います！

「めんつゆの世界」でのダンスシーン (c)BS松竹東急／松竹

会話劇ならではのテンポを作るには、練習あるのみ！

――ドラマとしては、露が働く通販会社YARANAIの皆さんとの会話劇を中心としたコメディーになっていますが、会話劇の大変さや難しさを感じることはありましたか？

会話ベースでお話が進むので、会話のテンポ感がとても大事で。そんな中、セリフ量はもちろん、一日で撮らないといけないシーンも多かったので、そこは毎日大変でした。速いラリーが必要なシーンは覚えることと“間”の作り方だけじゃなく、共演者の方と仲を深めながら、役としての関係性を築いていくこともすごく重要だったので、意識しながら撮影していました。

――シーズン1では、話数が進むにつれて会話のテンポも上がっていくように感じました。

撮影期間中はずっとみんなと一緒にいたので、仲が深まっていく感じがまさに反映されていると思います。

――チームワークを深めるために、鞘師さんから働きかけたことなどはありましたか？

本当にすてきな人たちとすてきな環境で撮影することができたので、私が気負って何かすることはあまりなくて。休憩中もみんなで「これおいしいね～！」とかお話したりしていました。加治将樹さん（保ヶ辺勉役）からは「こういうふうにしてみよう」と動きの提案をいただいたり、「僕がここで食べるから、そのときにツッコんでほしい」とタイミングを伝えていただいたり、話し合いをしながら撮影していたので、すごく助けられましたし、自然と仲良くなれました。

――アドリブもありましたか？

かなりあります。一番多いのは、せりふが終わったあと、シーンが終わる余白みたいなところです。カットがなかなかかからないときも演技は続けていましたけど、「早くカットかけて～！」って思いながら演じていました（笑）。アドリブで生まれたシーンを、そのまま使っていることも多いんですよ。だから、吹き出しちゃっているところやセリフを言っているのにちょっと笑いを耐えられていない部分もあって（笑）。そこも素の顔になっていたと思います。

――ほかにも撮影現場で印象的だったエピソードはありますか？

とにかく会話のセリフが多いので、テンポを速くしたいシーンは事前に速さを意識したラリーの練習をしていました。動きの確認もすごく多かったですね。「ここで転がってみよう！」や、カメラワークに合わせて「これぐらい映りたい」「ここ映らないようにしよう」など動きながら練習していたので、ダンスなの!? って感じでした（笑）。

――すごく動きのある現場なんですね（笑）。

ワンカットで撮影するミュージックビデオのような撮り方もありました。廊下から出てきて、ずっと会話は繰り広げられているけど、途中でドアからまた人が出てきて……というような。そのときに「私はこのセリフを言ったら左側を向くので、それに対してドアを開けてください！」とお願いしたり。もうミュージカルみたいな段取りですよね（笑）。でも、すごく楽しかったです。

――練習は鞘師さんから提案するんですか？

私からお願いすることもあります。でも、自然とやろうという空気感ができていました。

お芝居でこんなに解放されることって今までなかった

――会社でのにぎやかなシーンに対して、家での「心の十越さん」との会話シーンは、プライベートを垣間見ているような親密さを感じました。あれは普段の鞘師さんが反映されているのでしょうか？

確かに、私が普段友達と話している感じかもしれないですね。距離感もそうですし、友達にちょっかいを出すときによくやる動きもしていたと思います。私と露には共通点が多いので、自分とかけ離れたキャラクターを一から作り上げるというよりは、私が家にいるときや友達といるときをかなり反映させていました。

――かなりご自身に近いキャラクターだったんですね。では、自分の中で役として作り込んだ部分はあまりなかったですか？

コメディーだから面白くしようと意識するよりは、セリフで作られる気持ちを大きく表現しようと思っていました。あと、一番意識したのは照れないことですね。

――最初は照れがあった？

撮影に入った時点で「照れ」は捨てているんですけど、私は普段控えめなところがあり、「何でもOKです！」「何でも参加します！」というタイプではないんです。だからこそ、露を演じるときは絶対にそうなってはいけない、それが一番微妙に映るだろうなと思ったので、「自分の閉ざしているものをすべて解放する」ということをすごく意識するようにしていました。

――スイッチを切り替える感じですか？

そうですね。でも、そのおかげで自分としても一皮むけた気持ちになりました。

――「一皮むけた」とは？

単純に解放感が芽生えたというか……。お芝居でこんなに解放されることって今までなかったんです。

――アーティストとしてステージに立つ感じに近いですか？

そうですね。本当にエネルギーを解き放った感覚があって、この作品で「お芝居で思い切る心」を得られたのは大きかったと思います。動きのバリエーションもそうだし、これまで縮こまって考えていたものが解放されたような気持ちになって、「もっと試してみてもいいんだな」という気づきを得られました。

――シーズン2の撮影が始まる際に、準備されたことなどありましたか？

シーズン1を振り返って見ていて、「ここのテンポ感はもっと上げられたな」「もっと動きが激しいほうがよかったな」と自分の中で反省した点が多々あったので、それを生かすことは考えています。あとは、シーズン1を見てくださっていた方がシーズン2を見て、「また見られてよかったな」と思ってもらえる作品にするにはどうしたらいいのか考えていて、全体的な精度を上げることを意識しないといけないと思っていました。

――共演者の方々には新メンバーも加わって新体制となりますが、いかがですか？

新しいキャストの皆さんもすごくエネルギーのある人たちなので、前よりもにぎやかになっているのは間違いないと思います。女子が増えているので、女子会みたいな感じもありますね。かといって、前作から続投の社長（ふせえりさん）や保ヶ辺さん（加治さん）を含めた会社の雰囲気は変わっていないので、シーズン1を気に入ってくださった方を裏切るようなことはないと思いますし、もっとワクワクするような内容になっているはずです！