キャラの濃淡も自由自在！“グラデーション声優”福山潤の代表作を振り返り

さらに広がる役の振り幅！ 濃すぎるキャラでも安心！

2008年には女性人気の高い「黒執事」でグレル・サトクリフを担当しています。表向きはドジな執事でありながらその正体はチェーンソーを振り回す死神。女性的な口調でSとMな性格を行ったり来たりする、「そこまで振り幅が大きくなくていいんじゃない？」というハイテンションキャラは必見です。

2012年には「キングダム」で、国を背負い民衆を鼓舞する若きカリスマで後の秦の始皇帝になる嬴政を演じています。本作では福山さんの凛々しい演技を堪能できます。

2015年には、往年の名作「おそ松くん」をリブートしてファンの心をガッチリつかんだ「おそ松さん」で、猫背で無気力そうな目をした四男・一松役で出演。ここでは卑屈で皮肉でネガティブな、でも愛嬌のある毒舌家を演じ、福山さんが演じるキャラの新たな一面が開拓されました。

新たな一面の役柄といえば、TOHOシネマズ系列の映画館で幕間上映されていたファンシーなちびゴジラが登場するショートアニメ「ちびゴジラの逆襲」。2023年にテレビアニメ化された際に、主役のちびゴジラを福山さんが担当して、破壊衝動に従いカジュアルに放射熱線をはく天真爛漫なキャラの声を担当しています。

一部抜粋しただけでも、ハマり役がこれだけバラエティーに富んでいるのは福山さんならでは。業界からの信頼感も厚い声優だからこそのふり幅だといえるでしょう。

集大成が堪能できる、ジャンプアニメの“あの”先生！

福山さんといえば、ジャンプ作品のアニメでの活躍も印象的。2004年にアニメ化され2012年まで放送されていた「BLEACH」で、小島水色と綾瀬川弓親の二役を担当していますが、10年ぶりの続編として2022年から制作・放送されている「BLEACH 千年血戦篇」でも福山さんが二役ともに続投となっています。主演作品では2006年に「武装錬金」の武藤カズキでジャンプ作品初の主演を務め、2010年に「ぬらりひょんの孫」で奴良リクオを演じました。主演以外でも2012年には「テニスの王子様」で忍足謙也、2013年の「黒子のバスケ」の花宮真、2014年には「ワールドトリガー」で烏丸京介、2020年「食戟のソーマ」の3期では才波朝陽を担当と、ジャンプ作品アニメの常連ともいえそうな出演歴を誇ります。

そんなジャンプ作品アニメの中でも“福山キャラ”の極めつけともいえるのが、冒頭でも紹介している2015年にアニメ化された「暗殺教室」の“殺せんせー”ではないでしょうか。実写映画にもなった「暗殺教室」は、学校の問題児たちを集めたクラスに、政府関係者と共に黄色いタコのような謎の生物・殺せんせーがやって来て担任となり、自らをターゲットにした暗殺を通じた教育で生徒の成長を促すという作品。

気の抜けたようしゃべり口や、「ヌルフフフフフ」という妙な笑い方などの卓越したコミカル演技とはまったく異なる、殺せんせーになる以前のひょうひょうとしたシリアス演技は、福山さんでなくてはならない、カメレオンとグラデーションの演技の広さがさえ渡る完璧な配役でした。

なお殺せんせーのコミカル演技にハマった人には、2013年「げんしけん 二代目」の“くっちー”こと朽木学役も必聴です。ウザくて若干のいら立ちを覚えるキャラですが、福山さんのノリノリの演技がクセになってしまい、思わずリピートしたくなります。

今回紹介したものは、ほんの一部のキャラクターでしかありません。そして今後も、福山さんならではの繊細かつ多彩な演じ分けで、新たなキャラに息を吹き込み続けてくれることでしょう。これからの活躍にも目が離せません！

文：三平×2