2025年02月03日 18時00分
インタビュー
2025年02月03日 18時00分
インタビュー
ギリシャ悲劇の最高峰とも言われる「オイディプス王」に出演する岡本圭人さん
2025年2月21日~24日に東京・パルテノン多摩 大ホール、2025年3月1日に大阪・SkyシアターMBSにて上演される舞台「オイディプス王」に出演する岡本圭人さん。紀元前に執筆された、世界最高峰と称されるギリシャ悲劇への意気込みや、作品との向き合い方についてお話を伺いました。
――「目標の一つだった」というギリシャ悲劇に初挑戦となりますが、出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか?
昔から古典が好きなので、お話をいただいたときはすごくうれしかったです。絶対挑戦したいと思っていたので。そしたらまさか「オイディプス王」というギリシャ悲劇の中でも最高峰といわれている作品に挑戦できるということで、とても光栄ですし、楽しみです。
――古典演劇のどんなところに魅力を感じていたのでしょう?
2000年以上前に書かれている作品ってすごくないですか? アメリカの演劇学校に通っているときに座学で古典演劇を学びましたが、セリフが残っているもので考えるとギリシャ悲劇が演劇の起源になるんです。語り継がれているということは、それくらい人の教えになっていたり、人のためになっていたりするからだと思うし、僕自身、自分の人生がちょっと変わるような舞台作品って、シェイクスピアをはじめとした古典が多かったんです。やっぱり、昔に書き記されたものというのは、すごく大きな出来事なんだと思います。だからこそ、役者にとっても自分の力量以上のものを出せたり、心の中にある“出したことのないもの”を出せる舞台なんだろうなって気がするんです。
――語り継がれてきた背景には、演じる側へ与える影響もあるのかもしれませんね。
子どもの頃に古典演劇を見たとき、「何がこの人たちをここまで演じさせるんだろう」と思ったんです。「ああいうふうになってみたいな」「あそこには何があるんだろう」ってずっと憧れていました。ギリシャ悲劇の「オイディプス王」はすごい話だから、自分が演じることで、今の日本のお客様に少しでも得るものがあったと思っていただけるようなことや、人生が少しでも豊かになるようなことをお届けできればと願っています。
――憧れが強いからこそ、構えてしまったりしませんか?
……どうしよう、全然構えてないや(笑)。2023年にシェイクスピアの「ハムレット」を経験させていただいて、昨年11月には日本の古典である「源氏物語」にも挑戦させていただいたので、紀元前に書かれた最古の作品であるギリシャ悲劇の舞台に立ったときにどうなるのかって考えると、楽しみな気持ちのほうが勝っているんですよね。
――主人公・オイディプス(三浦涼介)の母であり、のちにオイディプスの妻となるイオカステ(大空ゆうひ)の弟・クレオンという重要な役どころを演じる岡本さんですが、この役をいただいたときの率直な感想を教えてください。
「まだ自分にオイディプスは早いんだな」って思いました(笑)。単純にね! それは「ハムレット」でレアーティーズをやったときも一緒です(笑)。ただ、演劇学校ではオイディプスのセリフも勉強していたので、どれだけ大変な役かっていうのもわかっているんです。だからこそ、少しでも三浦さんが演じるオイディプスを支えて、前回2023年7月に上演されたときの「オイディプス王」とは違った旅路に進むことができたらなと思っています。
――三浦さんとは2回目の共演になりますが、岡本さんから見た三浦さんはどんな役者さんですか?
10年くらい前から三浦さんの舞台を見てきて、やっぱり華がありますし、声もすごくよくて、強い中にもはかなさを秘めているなと思います。見れば見るほど吸い込まれるような力を持っていますよね。前回の共演はリーディング劇(「リーディングシアター GOTT 神」)だったので、隣に座っていて顔は見ていないんですよ(笑)。やっと対峙して、目を見てセリフを言えるのはすごく楽しみです。
――今回演じるクレオンとはどんな人物だと感じましたか?
「葛藤がすごく多い人だな」と思いました。オイディプス王とは立場が違うので、“言いたいけど言えない”みたいな思いや葛藤があるんです。クレオンのセリフの裏にあるものは、他の役柄よりも多いんじゃないかな……。
――クレオンは王をサポートしていく役ですが、岡本さん自身はパーソナルな悩みを持っている方にどう寄り添っていくタイプですか?
何も言わないかもしれないですね。僕自身「これが自分だから」って考えで生きているので。子どもの頃から「人と違うね」「なんで普通にできないんだ」って言われることがよくありましたが、今考えるとそれが自分だし、個性だと思うんです。だから、もし誰かに「自分のこういう部分に悩んでるんだよね」と言われたら、「それがいいじゃん!」「そこがいいのに!」って感じると思います。……でも、そんなこと言っておきながら自分のコンプレックスがいっぱい出てきたな。魚食べられないとか、キノコ食べられないとか(笑)。
――(笑)。コンプレックスとの向き合い方って難しいですよね。
もう自分の辞書から「コンプレックス」って言葉をなくしちゃえばいいのかもしれない。「complex」って英語は「弱い」って意味ではないんですよ。「難しい」というニュアンスの意味があるから、ネガティブに捉えないように、そっちにしちゃえばいいんじゃないかな。
――“自分がどう捉えるか”ですね。
それでいうと、古典演劇も一緒なんです。なんとでも捉えられるから、お客様、役者、演出家、それぞれの解釈ですごく変わる。だからこそ、いろんな可能性が秘められているので、演出の石丸さち子さんがクレオンをどういう人物だと思っているのか、どう見せたいのかを知るのがすごく楽しみです。
――石丸さんとは昨年10月に「GOTT 神」でご一緒されていますが、どんな印象でしたか?
目指している演出のレベルが非常に高いと感じました。そして、役者の能力を引き出す力がものすごくある方でもあって。「GOTT」のとき、「僕、もっと稽古がしたいです!」って言ったら、毎回稽古が終わった後に3時間くらい1対1で付き合ってくださったんです。ずっと「もう1回やって!」「はい!」「ダメ!」って繰り返しやってました(笑)。そうやって一緒に費やした時間やお互いが一生懸命どうにかしようとしたことが本番でも返ってくるので、今回もできるだけ稽古したいです。
――昨年は「GOTT 神」以外にもたくさんの作品に出演されていましたよね。
何本舞台をやらせていただいたんだろう。 1月に若村麻由美さんと「ラヴ・レターズ」をやって、夏前に「La Mère 母」と「Le Fils 息子」の同時上演をやり、7~9月はずーっとワークショップに通っていて、10月は「GOTT 神」、11月は「源氏物語(『光添へたる夕顔の花 - 光源氏』)」、12月は「NOT TALKING」。6本もやらせていただいたのか! ありがたいですね。しかも、全部ジャンルの違う舞台に出演させていただいたので、すごく勉強になりました。そういえば「源氏物語」は、舞台で初めての日本人役だったんです。
――確かに!
もっといろんなことができるな、挑戦できるな、と思いました。しかも、「源氏物語」はほとんど一人芝居だったので新しい世界が見えた感じもしました。これまでは相手のよさを引き出すお芝居が好きだったんです。相手もそれを返してくれて、どんどん相乗効果が生まれるから。でも、この作品で一人芝居もすごく楽しいんだなって知ることができました。プレッシャーがすごすぎて、めちゃくちゃセリフ忘れる夢を見ましたけど(笑)。最終的には無事に終えられたので、今年も何か挑戦してみたいなと思っています。
――そして今回はまた新しい挑戦となるギリシャ悲劇。岡本さんの出演をきっかけに、初めてギリシャ悲劇に触れるという方も多いのではないかと思います。「ギリシャ悲劇って難しそうだな」と思っているファンの方には、どんなふうにこの作品を楽しんでもらいたいですか?
僕って「悲劇しかやったことなくない?」って思ったんです。「舞台で涙が出なかったこと、ないな……」って(笑)。その中で最高の悲劇といわれている、ギリシャ悲劇に挑戦できるのは僕自身すごく楽しみです。だから、皆さんにも好きに楽しんでもらいたいです! 作品について、あまり調べてこなくてもいいと思います。調べなくてもしっかりと届けますし、とにかく来てもらえれば、いい経験をしていただけるようベストを尽くします。舞台ってチケット料金も高いじゃないですか? だから、絶対にそれ以上のものを届けたいと思って毎回やっています。今回も一生懸命、稽古を頑張りますのでぜひ来てください!!
取材・文:久野麻衣(t-press)
撮影:野間憲治
ヘアメイク:山口梓
スタイリスト:ゴウダアツコ
1993年4月1日生まれ。東京都出身。STARTO ENTERTAINMENT所属。2007年にHey! Say! JUMPのメンバーとしてCDデビュー。2018年にニューヨークの演劇学校へ留学するためグループ活動を休止。演劇学校を卒業後、2021年にHey! Say! JUMPを脱退。以降は俳優業に専念し舞台を中心に活躍している。父で俳優の岡本健一と初共演となった「Le Fil 息子」(’21年)で舞台単独初主演、「リズム」(’23年)でドラマ初主演を務める。2025年1月末に第五十九回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。
古代ギリシャの都市国家・テーバイを怪物スフィンクスから救ったオイディプス(三浦涼介)は、先王ライオスの妻だったイオカステ(大空ゆうひ)を妃に娶(めと)り、テーバイを治める王となった。しかし、テーバイに疫病が発生。イオカステの弟・クレオン(岡本圭人)をアポロンの神殿に派遣して神託を聞くが、そこから自らの「罪」が明らかになっていく――。
古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人ソポクレスが紀元前427年頃に執筆。世界最高峰と称されるギリシャ悲劇で、人生の不条理を魅力的にドラマティックに描いた作品。2023年7月に石丸さち子演出のもとパルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念として上演され、約1年半ぶりの新たな再演となる。
会場 東京都 パルテノン多摩 大ホール
2025年2月21日(金)~2月24日(月・祝)
会場 大阪府 SkyシアターMBS
2025年3月1日(土)
スタッフ
作:ソポクレス
翻訳:河合祥一郎
演出:石丸さち子
美術:土岐研一
照明:日下靖順
音響:清水麻理子
振付:平山素子
衣裳:前田文子
ヘアメイク:馮啓孝
演出助手:髙野玲
企画・製作:パルテノン多摩共同事業体
出演
三浦涼介 / 大空ゆうひ / 岡本圭人
浅野雅博 / 外山誠二 / 大石継太 / 今井朋彦 ほか
「オイディプス王」キービジュアル
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