2025年02月04日 18時00分
インタビュー
2025年02月04日 18時00分
インタビュー
1970年に連載された手塚治虫の長編漫画を現代に舞台を移してドラマ化した「アポロの歌」。佐藤勝利さんは複雑な家庭環境で育ち、愛を信じられないまま大人になった主人公・近石昭吾を演じています。愛を憎む昭吾が女神によって与えられたのは、愛が成就しそうになると死んでしまうという試練。また生き返って何度もループする不思議な世界のなかで、ひとりの女性を愛していく姿が描かれていきます。脚本、演出を手がけたのは映画「真夜中乙女戦争」、ドラマ「生き残った6人によると」などで知られる二宮健監督。連続ドラマへの出演は「赤いナースコール」以来となる佐藤さんに、物語のテーマや監督のライブ感あふれる演出によって生まれたもの、そして昭吾が愛し続けることになるヒロイン・ひろみを演じた高石あかりさんとの共演についてもうかがいました。
――オファーを受けた際の心境と、原作を読んで感じたことについて教えてください。
企画書のキービジュアルも手塚治虫さんの漫画の絵だったのですが、それを見させていただいたとき、オファーを受けたいという気持ちしか湧いてきませんでした。偉大な手塚さんの原作をどう映像化するんだろう、果たして自分が演じることができるのだろうか……とも思いましたね。でもチャレンジングで大変な世界に飛び込みたいと思いました。原作には理解が難しい部分もあるのですが、読み終わったときにこれは愛の物語だと思ったんです。伝えたいことはまっすぐでシンプルなものだな、と。ドラマは手塚プロさんとドラマイズムの共同でストーリー開発を行なっていて、原作とはまた違った現代版の解釈で作られています。でも一貫して言えるのは、愛を描いているということだと思います。
――1970年に連載された原作を、今ドラマ化する意味については、どのように考えていますか?
現代において、愛というものに真正面から向き合うことはなかなかないと思うんです。シンプルだからこそ、描くのが難しいというか。やっぱり大事なものって見失うし、身近であればあるほど改めて考えることが少なくなってしまうような気がします。原作には難解な部分がありますが、映像だからこそ伝わりやすいところも多くあると思います。手塚さんがこの作品を描いた当時の70年代の空気が現代では新しく感じるところもあるだろうし、物語を読み解いていく面白さもあると思いますね。
――今回演じられた近石昭吾という役柄を、どんな風に解釈していますか?
最初に原作やプロットを読んだときには、猟奇的な人物だと感じました。人や動物を殺すところがセンセーショナルで、ドラマではどうなるんだろうと思っていたんです。でもそこはドラマでは深くは描いていないので、キャラクターの軸にはしなかったですね。撮影に入るまでは、昭吾が好きになり続けるひろみへの思いはどこにあるのか、つかみづらいなと思っていました。昭吾は人を信用していないというか、言われたことがそのまま答えだとは思っていない人だと思います。僕自身も似たようなところがあるので、そういう部分には共感しました。
――キャラクターへの印象は撮影中に変化していったのでしょうか。
監督とチームの方たちとたくさん話しながら撮っていたので、演じながら気付くこともいっぱいありました。漫画とは解釈や描き方を変えながらも、原作の昭吾がそこに存在しなければいけなかったから、漫画を読み込んだうえでその場で思ったことも大事にしていましたね。昭吾ってほとんど笑わないのかなと思っていたのですが、監督とキャストの方たちと一緒に現場で時間を過ごすなかで、感情がないわけではないことがわかってきたんです。ローではあるけど、感情がまったく動かないわけじゃないんですよね。一方でひろみと過ごす時間が楽しいからといって、 普通の人間と同じような感情の動き方を描きたいわけでもない。そのバランスについても、現場で話しながら撮影していきました。
――二宮健監督の印象や、演出についてもお聞かせください。
ごあいさつをさせてもらったときから、すてきな人だなと思いました。演技指導の方法としては、削ぎ落としてくれる感じなんです。「そういう動きをすると言いたいこととは違うことが伝わっちゃうよ」というふうに演出してくださることもあって。初日から、またご一緒したいなと思うぐらい本当にすてきな監督でした。このシーンは物語にどう入ってくるんだろう? と思うようなドキュメントっぽくてライブ感のある撮り方もいっぱいあったんです。その場で起きたことを大事にしていたので決め打ちみたいなことはあまりなく、カメラマンさんが「ここは手持ちで回してみるか」みたいな(笑)。そういうふうに撮影したシーンが映像に挟まると、たぶんいろんなことが動くんでしょうね。キャラクターの感情の幅にもなるし、作品自体にも動きが出るんじゃないかなと思います。
――高石あかりさんとご一緒された印象についても教えてください。
高石さんはおそらく天然とか天才って言われていくと思うんですよ。実際に天然な一面が切り取られることもあっただろうし、僕も見かけました。だけどその言葉だけでは安易だなと思うぐらい、どう言葉で表現したらいいのかわからない人なんですよね。でも天才であることは間違いないです。ご一緒していて本当にびっくりして、衝撃的でした。そしたら、あれよあれよと朝ドラのヒロインになって……!
――どんなところが天才的だと感じましたか?
憑依するってことに近いと思うのですが、役に近づくスピードがすごいんです。涙するシーンでは、どこまで泣けるんだろうと思ったこともありました。朝ドラのヒロインに決まってこれから評価する方がたくさんいると思うんですけど、僕はそうじゃない。朝ドラのヒロインに決まる前にそう思っていました(笑)。ヒロインに決まったことも、そりゃそうだろうな、と。自分にとってもこんな経験はなかなかないと思える共演でしたし、ありがたいなと思いました。どうなっていくのか、末恐ろしいですよね。ものすごい存在になると思います。
※髙石あかりの「髙」ははしごだか
取材・文:細谷美香
©「アポロの歌」製作委員会・MBS
1996年10月30日生まれ。東京都出身。timeleszのメンバー。2011年にCDデビューを果たすと、俳優としても活躍し、2013年に「49」にて連続ドラマ初主演を務める。2017年には映画初出演にして初主演を務めた「ハルチカ」が公開。近年の主な出演作にドラマ「青野くんに触りたいから死にたい」、「赤いナースコール」(共に’22年)など。2024年には、舞台「Endless SHOCK・Endless SHOCK -Eternal-」、「モンスター・コールズ」に出演したほか、ダウ90000主宰の蓮見翔、演出家・ディレクターの橋本和明と共に結成したコントユニットによる「佐藤勝利のすべて」も上演された。現在、timeleszの新メンバーを探すためのオーディション番組「timelesz project -AUDITION -」がNetflixにて配信中。
2025年2月18日(火)スタート
MBS/TBS ドラマイズム
毎週(火)MBS 24:59~ TBS 25:28〜
幼い頃、日によって違う“パパ”と過ごす母をラブホテルの裏口で待つような暮らしをしていた近石昭吾。淫らな場面を見てしまった日には、母に暴力を振るわれることもあった。大学生になった昭吾(佐藤勝利)は年上の女性と寝て、お金を受け取る退廃的な日々を送っている。そんななか、幼馴染でBAR「アガペ」で働く渡ひろみ(高石あかり)は、昭吾に思いを寄せていた。2人の距離が近づいたある夜、昭吾に突き飛ばされたひろみは交通事故で命を失ってしまう。その後、遠いどこかで目覚めた昭吾の前に現れた女神に「そなたは何度もひとりの女性を愛するだろう。だがその愛が結ばれる前に、必ず死なねばならぬ」と告げられる……。
出演
佐藤勝利 / 高石あかり 他
※高石あかりの「高」ははしごだか
©「アポロの歌」製作委員会・MBS
79
この記事はいかがでしたか?
1記事10回までリアクションできます
RECOMMENDED TAGS
REAL TIME RANKING
CHEER RANKING