2025年02月20日 12時54分
レポート
2025年02月20日 12時54分
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舞台「浪人街」ゲネプロの模様
SUPER EIGHT・丸山隆平が主演する時代劇の舞台「浪人街」が、本日 2月20日から上演されます。東京・新橋演舞場から愛知・御園座、京都・南座と約2カ月にわたる53公演の初日を前に、公開ゲネプロと囲み取材会が行われました。「浪人街」のオリジナルは1928年にマキノ正博が監督したサイレント映画シリーズ。数十名で行う“集団殺陣”を切り開き、ほとんどのキャストが無名の俳優ながら大ヒットを記録しました。その後も、1990年の原田芳雄主演版まで4度リメイク映画化された、不朽の名作です。
最大の見どころの殺陣はもちろん、登場人物それぞれの抱えるものや感情の機微をより丁寧に描き、人間ドラマとしての面白さを詰め込んだとうたわれる本作は、丸山にとって初の舞台での時代劇になります。
暗転した会場に笛の音から荘厳な音楽が流れ、幕が上がると、そこは江戸の町のにぎわっている飲み屋。やくざ者、夜鷹、浪人といったはみ出し者たちが集い、酒を酌み交わしているところに、入ってきたのは刀を携えた新顔の浪人・荒牧源内(丸山)。すでにかなり酔っぱらっている様子で、足取りもおぼつかなく、ふらふらとイスに座ると他の客の徳利から勝手に手酌で飲み始めました。店を営む藤兵衛(佐藤誓)にお代として「丸ごと受け取れ」と投げた財布は、中身が空っぽ。「俺の財布はこれだ」と、常連客で巾着切りのお新(玄理)の手を取りますが、お新に殴られて倒れました。用心棒の赤牛弥五右衛門(入野自由)が入ってきて、「表に出ろ」と勝負を挑まれる源内。酔いが回ってヨロヨロに見えて、切り掛かってくる赤牛を軽くかわし、足を引っ掛けたりしていなして、自身の刀を抜くとあっという間に赤牛を追い詰めました。そこに高潔なたたずまいの浪人、母衣権兵衛(入江甚儀)が仲裁に入り、「酒なら持ってる」と3人で飲み直します。源内は軽口を叩き続け、母衣にお新を口説くようにけしかけていました。
源内が酔ったまま「亭主殿のお帰りだぞ!」と入ったのは、お新の家。実は二人は夫婦ながら、源内が家を出て「金が尽きたから」3年ぶりに帰ってきたとのこと。銃を突きつけるお新に「すまなかったな」としおらしいところを見せたと思いきや銃を奪い、抱き締めて「お前とは切れない」とささやく裏で、財布を掠め取ろうとしたり。この上ないほどのろくでなしぶりを丸山が演じ切っていきます。
その後も酔っぱらって女をはべらして飲み屋などに現れる源内に、お新はキツく当たりながらも惚れ込んでいて、縁を切れない様子。母衣がお新の家を訪ねたところにも源内が来て、「出てってやるから銭よこせ」という始末です。二人の関係を知らなかった母衣がとがめますが、お新は「このろくでなしに残ったわずかばかりの情けでしょう」と、立派な男を自分の代わりにあてがおうとした源内の想いを察していました。しかし、母衣はそれもお新への許せない仕打ちだと、刀を抜いて切り掛かります。またサッとかわす源内は、母衣に「さほど酔うているわけでもあるまい」と見抜かれ、剣を抜いて本気の顔になります。一触即発の最中、女たちが駆け込んできて、飲み屋の藤兵衛が殺されたことを告げました。飲み屋も焼き払われていて……。実は旗本の小幡伝太夫(神保悟志)とその弟の七郎右衛門(矢柴俊博)が屋敷の裏売買のため、藤兵衛が二百両を盗んだとでっち上げたうえ、家来らと共に征伐として殺したのでした。
お新は父親同然だった藤兵衛の復讐のため、銃を持って伝太夫らの座敷に乗り込みますが捕らえられ、伝太夫が危険視する源内をおびき出す人質となってしまいます。一計を案じて助けに向かった源内は、何人もの敵に1人で立ち回り。ヒーロー的に次々と切り捨てていくのでなく、相手をいなす受け身から入るスタイルの殺陣は、意外と独特に感じました。ともあれ、赤牛が伝太夫側に寝返って、作戦は失敗。そのまま逃げ帰ったものの、翌朝にお新が牛裂きの刑に処されると聞いた源内は、ついに意を決し、大勢の敵が待ち構えているところに乗り込んでいきます。笛を吹いて客席の後方から登場。2本の刀を脇に差し、さらに背中にも2本。縛られているお新に向かおうと、「邪魔する奴はぶった斬る!」と初めての射貫くような眼差しに。
1人で多勢を相手にしながら、かわしては斬っていく流れるような殺陣を見せます。母衣が助太刀に駆け付け、手強い七郎右衛門も剣を抜き、舞台が回転する中で敵・味方が入り乱れる怒涛の集団殺陣が繰り広げられました。源内は七郎右衛門に斬りつけられた上半身の着物をはだけ、「歪んだ剣に二度と斬らせるか!」と1対1の勝負へ……。圧巻のクライマックスでした。
ゲネプロ後には、丸山、玄理、武士から没落して物乞いで食いつなぐ土居孫左衛門役の板尾創路、演出の一色隆司による囲み取材が行われました。
まず丸山が「当時の世界にどっぷり浸っていただけるように仕上がっていると思います。ここ最近見ていなかったような本格的な時代劇を、一生懸命務めさせていただきます」と挨拶。玄理が「約1カ月、みんなで(稽古を)頑張ってきて、本当にチームワークが良くなって。舞台袖でもずっとしゃべって笑っています」と言うと、丸山は「よく笑っているのはあなた(笑)。楽屋の前でキャッキャ聞こえてきて、おかげで和んでます」とツッコんでいました。
板尾は「殺陣がすごい。私は61歳なので、みんなと次元が違う体力のなさで、呼吸がすごく苦しくて。口が2つあったらいいなと初めて思いました」と、笑い混じりでこの舞台の見た目以上の激しさをうかがわせます。一色が「丸山さんはすてきな源内を作ってくれて、芝居も素晴らしいし殺陣もすごい。代表作になるんじゃないかと思います」と言うと、丸山が「そのつもりでやっています」と応じる一幕も。初日を迎える気持ちについては、「みんなで一丸になって作ったものを欲張らずに届けるだけ。力まないほうがいいんじゃないかと」と話した丸山。53公演を見据え「殺陣も普通の動きも実はすごく激しかったりするので、お互いの体を労わり合いながら、思いやりを持って最後までいけたら」と意気込み、「殺陣は自分1人で成り立つものではなくて、息の合い方も日によって違う。お互い細かく確認しながら、丁寧にお届けしたいです」と語りました。複雑な夫婦を演じる玄理は「(丸山は)ゆで卵に自信があると聞いて、私もゆで卵を持ってきていたので、交換してから仲良くなった気がします」とのエピソードを披露。丸山によると「ちょっと半熟、中がトロッとしているのが良きかなと。稽古で体力も付けないといけない。良質なたんぱく質を摂るべく、ゆで卵を8個くらい一気に作って、日々食べています」とのことでした。稽古の合間には、一色の差し入れのドーナツを、用意された型抜きをうまくできた先着5名がもらう争奪戦が行われていたそう。「20人以上いた中で、丸山さんが2連勝しました」(一色)と言い、和気あいあいとした雰囲気が垣間見えました。一方で、やはり殺陣の稽古は「みんな酸素不足になりました」(丸山)と厳しかったようです。
劇中で源内はほぼ酔っぱらった状態で、丸山から「気持ちが冷めてしまったら怖いので、稽古で解消させてもらいました」という話も。以前に「筋肉から作っていきたい」と宣言していましたが、「パンプというより、細いしなやかなほうで攻めていて。家にジェラルミンの居合の刀があって、去年から振ったりしながら、背中にもいい感じに付いていると思います」と、上半身をはだけるクライマックスにも自信あり気でした。
最後に改めて「浪人街」を㏚。板尾は「殺陣がメインのイメージですけど、夫婦の物語のような気がします。最後に愛が見えて終わって。ギスギスしているご夫婦に見ていただけたら、手を繋いで帰れるんじゃないかと(笑)」と人間ドラマの部分を挙げました。
一色も「人情あり、愛あり、絆の物語あり。お客さんが何かを持って帰っていただけるような、メッセージ性もあります」と続けます。玄理は「登場人物が誰ひとりまともじゃない(笑)。アウトローな住人たちの話ですけど、それぞれ守りたいもの、信じたいものがあって。どのキャラクターにも感情移入して見てもらえます」と話しました。
そして、主演の丸山が締めの挨拶を。「由緒正しい劇場で、見に来てくれた皆さんにどんなふうに刺さり、感じてもらえるのか。僕らは表現する側ですけど、見る側にもなりたい作品に仕上がりました。この時代に新しい「浪人街」が生まれたことには、何かの意味があると思います。この期間だけのものなので、ぜひ劇場に足を運んでいただき、当時と今の世界を照らし合わせながら、想いを巡らせていただけたら」。熱のこもった言葉が届けられました。
取材・文:斉藤貴志
撮影:古賀良郎
2025年2月20日(木)~3月16日(日)
会場 東京都 新橋演舞場
2025年3月21日(金)~28日(金)
会場 愛知県 御園座
2025年4月2日(水)~10日(木)
会場 京都府 南座
スタッフ
原作:山上伊太郎
出演
丸山隆平 / 玄理 / 入野自由 / 藤野涼子 / 入江甚儀 / 佐藤誓 / 矢柴俊博 / 神保悟志 / 板尾創路
「浪人街」ビジュアル
89
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