杢代和人が「3C不倫」で表現する繊細な伊織像、言葉ににじむ責任とプライド

成人年齢が18歳となり、高校が舞台の不倫サスペンスとして衝撃の展開が続く「3年C組は不倫してます。」（日本テレビ）。同級生と結婚しながら不倫に墜ちるエリート高校生・橘伊織を杢代和人さんが演じています。優しすぎるゆえに、思い合っていた主人公の上村蒼（莉子さん）を傷つけてしまう役どころ。新境地への取り組みから現場でのイジられキャラぶりまで語ってくれました。

今まで演じてきた中で一番繊細な役

――「3年C組は不倫してます。」のキャスト発表時の杢代さんのコメントで、「『伊織…なにやってるんだよ…』と思ってしまうかもしれません」とありました。自分と元カノの琴音（秋田汐梨さん）との婚姻届に蒼が証人としてサインさせられたとき、何度も目配せされながらうつむいたまま無言だったところとか、確かに「何やってるんだよ」と思ってしまいました。

そうですよね（笑）。伊織は何もできませんでしたから。ただの結婚と違って、琴音のお腹には自分との子どもがいるので、伊織の気持ちもわからなくはないです。仮に自分が同じ立場だったらどうするだろう？とは考えました。僕なら伊織とは違う行動をしていたと思います。

――伊織は優しすぎるのでしょうか？

優しすぎますし、自分のことより他者のことを先に考えてしまうんです。父親が病院の院長で自分は跡取り。不祥事はあってはならないと、自分は二の次であの状況になってしまったのかなと。

――家庭環境は大きいようですね。

大きいです。親からのプレッシャーもあると思うし、自分の家なのに緊張感があって、ほのぼのとはしてなくて。

――蒼に「ずっと苦しそうに見える」と言ってましたが、伊織自身もずっと苦しそうです。

本当に心を開ける人が少ないと思うんです。家でも自由でない。学校では成績トップでなければいけない。病院も継ぐことになっている。縛られながら生きてきたように感じます。

3c_#6_C0625_R1.JPG
「3年C組は不倫してます。」より　(c)日本テレビ

――そんな伊織を演じるうえで、意識することはありますか？

常に他者をどう思っているかを考えました。蒼のことはずっと好きだけど、蒼のことだけを考えていたわけでもない。親のことも考えていたし、琴音のことも嫌いなのかといったら、そうではなくて。琴音に自分の気持ちを訴えるシーンでも、強い言い方をしていい立場なのだろうか……とか。僕が今まで演じてきた中で一番繊細な役でした。

感じたとおりに伝わっていてうれしい

――3話の最後で蒼を後ろから抱き締めて「俺が好きなのは蒼なんだ」と言ったところは、思いがあふれてしまった感じですか？

あれは後先考えた行動ではなくて、突発的な感情があふれたところでした。してはいけないことかもしれないけど、よくも悪くも18才。大人でも子どもでもない部分が出てしまって。そういうことも、見てくださる方に感じてもらえたらいいなと思っています。

――4話終わりの、早朝の教室の窓際での蒼とのキスシーンも、美しいと話題になりました。

印象的なカットになるように、監督やカメラマンさんも含め、みんなできれいに撮ろうと意識していました。出来上がった映像を見たら、すごくきれいになっていて。

――2人とも両手を下ろしたままのキスは、意外とあまり見ないかと。

気持ちは純愛だけど不倫なんですよね。手を相手の顔に置いたりしたら、ためらいが見えなくなってしまう。だから、触れないほうがこの作品に合っている。些細なことですが、現場でそんな話し合いを監督や莉子さんとしながら演じていました。視聴者の皆さんも盛り上がってくれたみたいで、頑張ったかいがありました。

「3年C組は不倫してます。」より　(c)日本テレビ

――視聴者の反応は気に掛けているんですか？

僕は見ています。「このシーンはこう見られていたんだ」と発見にもなるので。やっぱり「伊織は何をやっているんだ」という声は多いですね。僕もそう思います……と伊織を演じていて言うのもおかしいですけど（笑）、感じたとおりに伝わっているという意味ではうれしいです。

――蒼との中学時代の夏休みのシーンや、2人で夜の校舎に忍び込むシーンは、すごく青春感がありました。

“THE青春”ですよね。楽しかったです。演じるうえで、不倫関係になっていくのを忘れていいのか。蒼と伊織が中学生ぶりに再会したあとは、まだお互いの距離感が難しかったんですけど、割り切ってやることになりました。18才はそんな難しいことは考えない、楽しいときは楽しい表情をするよねと。夜の学校に忍び込むなんて、すごくロマンチックだからこそ、その後の温度差が見ていて面白いと思います。