成長を続ける、結束バンドの現在地。キャスト4人の生演奏にサプライズ発表も

アニメ「ぼっち・ざ・ろっく！」の劇中バンドとして誕生した結束バンド。音楽ファンをうならせる楽曲のクオリティや、実力派ミュージシャンによる演奏、ライブイベントへの出演など、アニメと現実の境界を交差してきた存在です。

2024年のZeppツアー、さらには2025年2月15日に武蔵野の森総合スポーツプラザで開催され、約1万人を動員したアリーナ公演「We will B」。そのステージは、アニメを愛するファンだけでなく、ロックを愛する人々の心にも火をつけたはずです。なぜ、結束バンドの音楽はここまで人を引きつけるのでしょうか？彼女たちの歩みと、ライブの熱狂を振り返ります。

アニメも現実も、音楽性が高く評価される結束バンドとは？

「陰キャならロックをやれ！」という強烈なキャッチコピーを引っ提げ、2022年に放送開始されたのがアニメ「ぼっち・ざ・ろっく！」です。孤独なギタリスト・後藤ひとり（通称：ぼっちちゃん）が、結束バンドに加入し成長していく物語は、青春の瞬きを感じるストーリー展開やキャラクターの愛らしさで、多くの視聴者の心をつかみました。

本作はアニメでありながら、楽曲制作や演奏に本物のミュージシャンが関わることで、実際の音楽シーンと強く結びついている点も、人気の理由です。「結束バンド」は、ギターボーカルの後藤ひとり（CV：青山吉能）、ドラムの伊地知虹夏（CV：鈴代紗弓）、ベースの山田リョウ（CV：水野朔）、ギターボーカルの喜多郁代（CV：長谷川育美）の4人で構成されています。

そんな結束バンドの楽曲は、tricot／ジェニーハイの中嶋イッキュウ、KANA-BOONの谷口鮪、きのこ帝国の佐藤千亜妃など、多彩なアーティストが作詞・作曲を手掛け、ロックバンドとしての音楽性が高く評価されてきました。2022年に発表されたアルバム「結束バンド」は各種音楽チャートで1位を記録し、2024年のJAPAN JAMやROCK IN JAPANなどのフェスにも出演。原作に登場するフェス「未確認ライオット」のモデルとなった「閃光ライオット」では、2023年にオープニングアクトを務めるなど、作品と現実がリンクする活動を展開しています。

また、ギタリストの三井律郎、akkinやベーシストの高間有一、ドラムの比田井修といった実力派ミュージシャンが演奏を担当し、ライブではキャストの歌唱とともに、作品世界をリアルに再現。結束バンドは「現実のライブアーティスト」としても確固たる地位を確立してきました。アニメ放送終了から約2年がたつ今もなお熱狂を生み続けるのは、結束バンド自体の躍進あってこそなのかもしれません（原作は連載中）。

そんな彼女たちが、2024年から全国5都市を巡るツアー「結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”」を開催。その勢いのまま追加公演として、2025年2月15日に「結束バンド TOUR “We will B”」が実現しました。結束バンドとしては初のアリーナ開催となった本公演には約1万人のファンが詰めかけ、開演前の会場には期待感に満ちた空間が広がっていました。

8話のぼっちちゃん覚醒、12話のボトルネック奏法披露……あのシーンが現実に

ライブはアニメのオープニング映像とともに「青春コンプレックス」でスタート。長谷川育美（喜多郁代役）の力強い歌声が響き渡ると、会場の熱は一気に沸点に。「ギターと孤独と蒼い惑星」「ひとりぼっち東京」と続き、初期衝動を体現するかのような火力の高いロックチューンが畳みかけます。

続く「カラカラ」にて、水野朔（山田リョウ役）が登場。ベースラインが引き立つ「カラカラ」から「惑う星」の流れでは、会場を盛り上げながらも、凛と歌い上げました。「Distortion!!」では観客のハンドクラップが巻き起こり、続いて披露された「僕と三原色」「milky way」のステージでは、三原色が混じり合う映像や星がまばゆく光る演出で、観客は楽曲の世界観に浸りました。

「夢を束ねて」では青山吉能（後藤ひとり役）が登場し、繊細な歌声を響かせます。“大人になっても変わらないでいて”と切ない歌詞を優しく歌う彼女の声と、ギタリスト三井律郎が奏でる叙情的な音色は、ぼっちちゃんとしての感情が色濃くにじみます。演奏が終わると、星くずのようなアコースティックギターの音が流れ「秒針少女」へ。“まだ過去にならないで”という祈りのような歌詞に、会場は静寂と感動に包まれました。

そしてアニメ8話における“台風ライブ”でのギターソロをほうふつとさせるフレーズが飛び出した「あのバンド」や、ステージ上に炎の演出が加わった「ドッペルゲンガー」など、後半戦はよりエネルギッシュな展開に。「なにが悪い」では鈴代紗弓（伊地知虹夏役）が、キャラクターを体現するかのように元気いっぱいに歌唱。「いくぞ武蔵野ー！！！」と絶叫しながら歌い出した「UNITE」では、虹夏のメンバーカラーである黄色の光に包まれながら、観客を巻き込むダイナミックなパフォーマンスがさく裂しました。虹夏の強引さと明るさがぼっちちゃんをバンドへの道に誘い、彼女の夢が結束バンドの道標となっていることを再認識させるパフォーマンスでした。

本編ラストには「忘れてやらない」「星座になれたら」という、12話の文化祭シーンを彩った2曲を披露。三井による“ボトルネック奏法”の再現に、会場から拍手が湧きました。“ボトルネック奏法”とはガラスの管を弦の上で滑らせて音を出すギター奏法のひとつ。文化祭という晴れの舞台で弦が切れてしまった際に、ぼっちちゃんがステージ上に転がるカップ酒を使ってギターソロを乗り切るシーンは、視聴者の度肝を抜きました。

MCパートでは、長谷川が「自分は特別な人間だと思ってたときもあるんですけど、そうじゃないことに気付いて。でも諦められずいたら、運よくすてきな……奇跡のような出会いに恵まれて、応援してくださる皆様と出会えて、私はここに立つことができます」と感謝の意を伝え、「月並みに輝け」へ。“一生才能凡庸天才じゃないからさ何にもない何にもできない」なんて言い訳したくはないから何度も挑んでやる”という歌詞は、観客の共感をさらに高めました。