2025年04月08日 04時00分
レポート
2025年04月08日 04時00分
レポート
パルコ・プロデュース 2025「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」プレスコールの模様
続投組が7割程度の稽古場は「同窓会のようでした」とうれしそうに振り返った加藤は、「新キャストさん、特に瀧さんは初舞台ということでサポートするつもりでいたんです。でも、成長していく姿に引っ張られた気がします」と感謝。「いいカンパニーです」と胸を張った加藤でしたが、やはり舞台裏のドタバタ、大変さというのは改めてしっかりと伝えたいといった様子で、「印象に残っているのは、疲れるから各々がいつもマッサージをしたり、ストレッチをしたりしています。話題はどういうストレッチ道具が効くとかそんな話ばかり。もしくは、誰かしらが何かを食べています(笑)」と報告。体を休ませ、エネルギーを取り入れないと乗り切れない舞台だとも補足し、笑わせていました。
前回はコロナ禍で、稽古中に一緒にご飯を食べる機会もなかったそうですが、公演が終わってもカンパニーのメンバーと連絡を取ったりご飯を食べに行ったりするなど、交流は続いていたとのこと。「安蘭さんともご飯に一緒に行ったし、稽古休みの前日になると集まって慰め合うというのはよくありました」と加藤が今回の稽古期間のやり取りに触れると、村田が「マキノさんも参加して、有意義な時間を過ごせました」と話し、稽古以外でも楽しい時間を過ごしたとうれしそうに話していました。
「皆さんと仲良くなれるのか不安はあったけれど、ウォーミングアップしながらのご飯や、マッサージ、ツボの話などをしている皆さんのにぎやかな様子を見るのが密かな楽しみでした」との瀧の言葉に、加藤が「若いから疲れない。(みんなの様子を見ている)余裕があるんだなぁ」とちょっぴり羨ましそうに話し、笑いを誘う場面も。さらに2年ぶりの再演で驚いたのは意外とセリフを覚えていることだったと話した加藤からは「それだけ濃かった。濃かったのにまたやるんだと思ったけれど、やっていると『だからまたやるのか』と気付く場面も多かった。この座組でやったらもっと面白くなるというパルコ(・プロデュース)の目論見を感じました(笑)」と前作からのアップデートにも期待が高まるコメントも飛び出していました。
再演の話を聞いたのは初演の千秋楽だったと告白した加藤が「そんなバカな、嘘だろ! というのが最初の感想です」とニコニコ。続けて「みんな出し尽くした日にまたやるんだって思いました(笑)。(千秋楽でやり切った気持ちの)僕たちのモチベーションはどこに? とも思ったけれど、すごく仲が良かったので、このチームで集まってまたやれるのは楽しいかなとは思いました。実は、初演が終わってから安蘭さんとご飯に行ったときもやる前提で話していましたし、やるのが当たり前みたいな気持ちにもなっていました。ただ、今は2割くらい後悔しています」とポツリ。”後悔”の言葉にちょっぴり慌てた様子の村田を見てにやっとした加藤は「だって大変じゃないですか!!」とボヤくような雰囲気を見せつつも、「きっとまた楽しい日々が待っていると思います。でも、今回の東京の千秋楽はP(プロデューサー)と会わないようにして帰ろうかなって思います」と更なる再演話からは一旦逃げたい思いもあるとも明かし、取材陣を笑わせていました。
NEWSのメンバーについての話題も。「増田(貴久)もすぐ近くで今、舞台をやっているので差し入れしたいなとは思っているけれど、なかなか同じタイミングでここまで重なることもなくて。心の中でエールを送っています」と東京・渋谷で4月1日から上演中の、20th Centuryの坂本昌行と増田が初共演しているミュージカル「ホリデイ・イン」についても触れ、自分の舞台は体力的にもかなり疲れる作品のため、足を運ぶ時間ができたら、しっかりと体を休めて万全な体調で鑑賞したいとも話していました。
加藤演じる劇作家のエドモンは大スランプに陥り書けない状態が続いているという役どころです。書けないときの乗り越え方については、「書けないことはないので」とキリッとした表情を見せた加藤。「実は一つ締切が控えていて、稽古をやりながら書いています」と明すと、村田、安蘭が「えーーー!」と即座に反応し、このハードな稽古中に作家業もスマートに両立させていることに驚きを隠せない様子でした。「書けないというよりも、書く時間がないという感じ」と自身の悩みを明かした加藤は「ギリギリは何度もあるけれど、(原稿を)落としたことはない。やるしかないし……」と。コツは、シンプルに「やるしかない」という姿勢だと補足し、「乗り越えさせられているみたいなところも楽しいです」とどこまでも執筆業も楽しんでいる様子がうかがえました。
加藤には、舞台「染、色」の脚本を手がけ、第66回岸田國士戯曲賞の最終候補作品に選出された経験もあります。「3、4年前に(舞台の)脚本も書いたのですが、割と早く書き上がって。小説とは違う面白さがありました。自分が書いたセリフをキャストが言ってくれていたりするのが楽しくて……」と微笑んだ加藤は「エドモンをやっていると安蘭さんの役がわがままだから、あんなこと言われたらどうしよう……とか思ったりするけれど」と安蘭の顔を覗き込みエドモンの苦悩に触れつつも、自身はその悩みとは無縁と言った様子。「またいつか書きたいです!」との加藤の言葉に「俺も出たい!」と即答する村田に対し、「役によるかな……」と役とはいえ“わがまま”と言われたことで加藤にやんわり反撃する安蘭にキャスト陣も大爆笑。その様子に取材陣から「仲良しのエドモンカンパニーはまだまだ続きそう?」と尋ねられると「頑張ります!」と即答し、お気に入りのカンパニーであることも十分に伝わってくるやり取りを見せていました。
再演では「こういう意味だったのか……」という発見もあると役への解釈や演じ方の変化に触れた加藤は「これが演劇の深み。底がないんですよね。そういう発見は多かったです」と力を込め、「キャストが変わると自分も変わる。そういう再発見や変化は楽しかったです」とのこと。さらに「初演をやっていると、(再演で)ちょっと変えてみたくなる。でも、やってみると(初演の)あれが正解だったんだというのもあって……」と再演だからこそできるアプローチ、再演だからこそわかることにも触れ、見る側がアップデートを期待せずにはいられないようなコメントもたくさん飛び出していました。
最後の挨拶で加藤は「劇作家が無茶振りされてドタバタするコメディーです。劇作家のみならず、会社や上司、いろいろな無茶振りの日々を過ごしている方は多いはず。(舞台を見れば)憂さ晴らしもできるし、励みにもなります。こんなに苦労している人がいるんだと、12人を見て優越感を味わってください(笑)。初演以上のパワーは間違いなく出ています。チケット代以上の価値はあると断言します!」と作品そしてカンパニーの魅力をたっぷりと語った取材会を締めくくりました。
取材・文:タナカシノブ
撮影:古賀良郎
会場 東京都 PARCO劇場
2025年4月7日(月)~30日(水)
※4月10日(木)、4月15日(火)、4月22日(火)、4月28日(月)は休演
会場 大阪府 東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール
2025年5月9日(金)、10日(土)
会場 福岡県 福岡市民ホール 大ホール
2025年5月17日(土)、18日(日)
会場 愛知県 豊田市民文化会館 大ホール
2025年5月24日(土)
スタッフ
作:アレクシス・ミシャリク
上演台本・演出:マキノノゾミ
出演
加藤シゲアキ / 村田雄浩 / 瀧七海 / 細田善彦 / 福田転球 / 三上市朗 / 土屋佑壱 / 枝元萌 / 佐藤みゆき / 阿岐之将一 / 堀部圭亮 / 安蘭けい
「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」ビジュアル
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