2025年04月08日 04時00分
レポート
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パルコ・プロデュース 2025「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」プレスコールの模様
4月7日から30日まで東京・PARCO劇場、その後大阪、福岡、愛知にて上演される加藤シゲアキ主演舞台、パルコ・プロデュース 2025「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」が開幕。17世紀に実在した大きな鼻の剣豪詩人の恋物語「シラノ・ド・ベルジュラック」は、1897年にフランス・パリで初演され、世界でもっとも上演されている戯曲と言われています。本作は「シラノ・ド・ベルジュラック」の誕生秘話を、映画監督としても活躍するフランスの若手劇作家・演出家アレクシス・ミシャリクがドタバタ幕内コメディーとして描き、2016年にパリで、日本では2023年に東京・新国立劇場にて、マキノノゾミ演出、加藤シゲアキ主演で初演されました。
NEWSとしての活動にとどまらず、作家としても数々の人気作を生み出し、多岐に渡って活躍する加藤シゲアキが“書けない”劇作家エドモン・ロスタン役で主演を務め、新たなキャストとして、村田雄浩、瀧七海、阿岐之将一、堀部圭亮の4名を迎え、細田善彦、福田転球、三上市朗、土屋佑壱、枝元萌、佐藤みゆき、安蘭けいが初演から続投している本作は、個性豊かな実力派キャスト12名の出演者で約50役を演じ分けるスピード感も注目ポイントとなっています。
舞台は1897年12月のパリ。もうすぐ30歳になる劇作家エドモンは絶賛スランプ中。家には妻と二人の子どもを抱えながら、偉大な喜劇王・コクランに英雄的なコメディー詩劇を書くことを約束してしまったのに、2年間も全く書けない状態が続いています。大女優の気まぐれ、スポンサーの要求、妻の嫉妬に親友の恋愛……。彼の周りのすべてを巻き込んで一世一代の新作劇に取り組もうとするのですが、今のところ決まっているのは鼻の大きい詩人のコメディーということと、タイトル「シラノ・ド・ベルジュラック」だけ。エドモンは新作劇を書き上げ、無事に上演することができるのでしょうか。
プレスコールで披露されたのは、エドモン(加藤シゲアキ)がカフェのオーナー・オノレ(堀部圭亮)との会話をきっかけに新作のアイデアを思いつくシーンや、仲間たちに構想を説明するシーン、さらに新作劇開演1時間前、5分前のハラハラドキドキのシーンから、喜劇俳優・コクラン(村田雄浩)が長ゼリフを言いながら華麗な殺陣を披露し観客から拍手と歓声を浴びるシーンなど。合計で20分弱のシーンの披露でしたがが、かなりスピーディーに場面が転換し(しかも、キャストが小道具などを抱えてパパッと場面転換をしていく!)、キャストも華麗に早替わりをし、瞬きをしているとどこかが変化しているくらいの早い展開で次々と物語が進んでいくので、十分に本作の魅力を垣間見ることができました。
心地よい会話劇、スピーディーな転換と早替わり、12人で約50役が登場するにぎやかなステージ、と共に注目したいのが美しい舞台芸術。客席、楽屋、舞台。時には舞台部分がオノレがオーナーを務めるカフェになったり……。シーンごとに小道具や映像を駆使して、19世紀後半のパリを表現しているのですが、この小道具たちがどれもこれもいい味を出しています。コロコロ変わる場面転換に目を奪われがちですが、余裕があればじっくりと小道具一つ一つの作りにも注目してほしいところ。初演を見ている方は、加藤をはじめとする再演キャストのアップデートぶりもしっかりと受け取れるはず。
プレスコール後の取材会でも初演との役の解釈や演じ方の違いに触れていましたが、その表情からは自信と手応えを感じている様子が伝わってきていました。セリフ量、スピード、転換……。大変さがてんこ盛りの作品ですが、悩み苦しむエドモンや、新作劇の構成をキャストに伝えるシーンなどでの説明セリフでは、特に加藤のセリフ量&セリフ回しに圧倒されるはず。しかしながら、再演ということでどこか余裕も感じられ、悩んでいるエドモンに心を寄せながらも、加藤が魅せる芝居には安心感を覚えどっぷりと世界観に浸れること間違いなしです。
1897年当時でも独特の“古さ”を感じるような言い回しが特徴のエドモンのセリフですが、テンポのよさと心地よいリズム、さらには加藤の余裕も加わって、心にスーッと染み込んできます。舞台でしか味わえないこの感覚を、生のお芝居から受け止めてほしい。そんな風に感じられるプレスコールでした。
プレスコール後には演出のマキノノゾミ、エドモン役の加藤シゲアキ、コクラン役の村田雄浩、衣装係・ジャンヌ役の瀧七海、訳あり主演女優・マリア役の安蘭けいが取材会に出席。続投組、本作からの参加組、それぞれの立場からの初日への意気込みや稽古中の思い出、本作ならではの見どころなどを和気あいあいと語ってくれました。
初日を迎えた心境を尋ねられた加藤は2年前の初演を振り返り、「内容さながらにドタバタのカンパニーでした」とクスクス。「あのドタバタをまたやるのかという楽しさと不安が同時に押し寄せていますが、昨日のゲネプロですでにドタバタ(笑)」と苦笑いしながらも、そんなところも含めて観客にドタバタ感が伝わることを楽しみにしているとコメント。今回から参加となる村田は「演出のマキノさん、加藤くんをはじめ、みんなに『地獄へようこそ!』と言われました」と思い出し笑いをしながら報告。「ちゃんとできたらすごく面白い作品になると思ってはいるものの、マキノや加藤の言葉通り、稽古も含めて“地獄”だったとのこと。「加藤くんのセリフ量はめちゃくちゃ多いし、(自分が演じる)コクランもやたらしゃべっているけれど、なかなか(セリフが)覚えられない……」と言いつつも、「頑張るしかない!」と宣言すると、全員が「わかる」といった表情を浮かべながらも大爆笑。会見では終始「大変」「地獄」と言った言葉が飛び交い、この舞台を届けることの苦労がキャストからにじみ出ていましたが、常に笑いと一緒に語られるというのも、本作らしい印象を受けました。
本作が初舞台の瀧は「不安でいっぱい」としながらも、「ちゃんと稽古に向き合ってきたことが自信につながっています。共演者の皆さんと楽しみたいです」と前向きに宣言した瞬間、加藤と村田は「すげーな」と声をそろえて感心しきり。前作より「パワーアップしています。笑いも多くなっていると思います!」と話した安蘭は「前回はコロナもあって、なんとなくお客様との間に壁を感じて遠い気がしていました。今回は一体化して、(舞台の)質が上がり、分厚い作品になっている気がします」と自信に満ちた表情で「今回の舞台は参加型。お客様は笑いで、拍手で参加していただきたいです」と本作の楽しみ方をおすすめ。拍手や笑いではなく「本当に(舞台に)参加されたらどうしよう」とちょっぴり戸惑う村田に「それも面白いかも!」とすかさず安蘭が答えるなど、トークでも作品さながらのスピーディーな反応で盛り上げていました。
「出演者の地獄はお客様の天国」とニヤリとしたマキノは「エドモンが酷い目に遭えば遭うほど面白い」と本作の面白さを解説。転換も含めて本来舞台では無理だろうというところまで人間の力で見せるという珍しいタイプの作品と説明し、特に役者は体力勝負の作品だけど、アナログの魅力を感じながら存分に楽しんでほしいと呼びかけていました。さらに「人が酷い目に遭っているのを見ると楽しいと思える」と語ったマキノは「みんなが大変だから、必然的にチームワークが出来上がります。誰かがサボっていると船が沈んでしまうから、約50役を演じ分ける12人は常にフル稼働みたいな感じ。いい作品だと思うし、それが伝わればいいし、伝わるだろうと思っています」とこの舞台だからこそ出来上がったチームワークを感じられるのも本作の魅力とアピールしていました。
会場 東京都 PARCO劇場
2025年4月7日(月)~30日(水)
※4月10日(木)、4月15日(火)、4月22日(火)、4月28日(月)は休演
会場 大阪府 東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール
2025年5月9日(金)、10日(土)
会場 福岡県 福岡市民ホール 大ホール
2025年5月17日(土)、18日(日)
会場 愛知県 豊田市民文化会館 大ホール
2025年5月24日(土)
スタッフ
作:アレクシス・ミシャリク
上演台本・演出:マキノノゾミ
出演
加藤シゲアキ / 村田雄浩 / 瀧七海 / 細田善彦 / 福田転球 / 三上市朗 / 土屋佑壱 / 枝元萌 / 佐藤みゆき / 阿岐之将一 / 堀部圭亮 / 安蘭けい
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