2025年02月21日 18時00分
インタビュー
2025年02月21日 18時00分
インタビュー
「目立たない人が好き」と、思い入れのあるキャラクターについても語ってくれた加藤シゲアキさん
――大学生のまりなが愛について考える章には、特に温度感を感じました。エーリッヒ・フロムの「愛するということ」を読んだことが執筆のきっかけになったそうですが、この小説を書き終えた後、「愛とは?」という問いに対しての答えのようなものは見つかりましたか?
まりなの中には、愛に対する飽くなき探求心みたいなものがあるんです。書きながらまりなの体温になっていったし、自分の中にもああいう部分があるのだと思います。完成した今思うのは、小説は“答え”ではなく“問い”であることと同じように、「愛とは?」と考えることが愛なんじゃないか、と。これが愛でしょって言い切る言葉は存在せず、答えがないものを探し続ける行為こそが愛するということだと思っています。
――物語は、新種のウイルスが問題になり始めた頃に終わりを迎えます。コロナ禍を経た今、人間関係においてどのような変化があったと感じていますか?
みんなで何かを乗り越えたということで、つながりみたいなものは生まれたのかなと思います。でもSNSなどでつながりやすくなった分、人を記号っぽく感じている人が増えたような気がしているんです。それは残念なことだと思っているし、僕は自分の愛せなさのせいで後悔はしたくない。自分が関わることができた人たちに対しては、何かあっても俺はちゃんと愛したよ! って言えるように動いていきたいですね。分断を乗り越えていくためには愛が必要だと思いますが、他者を変えることはできない。だから自分が愛を持って生きていくしかないと思っています。
――ヒグチユウコさんの表紙もとてもすてきですよね。「せかいいちのねこ」以来の大ファンとのことですが、どのようにオファーをしたのでしょうか。
編集者に「誰か表紙を書いてほしい人はいますか?」と聞かれたので、もしもヒグチさんがミアキスを描いてくれるなら見てみたいよね、無理だと思うけど、っていう話をして。そしたら「1回聞いてきます!」「オッケーをもらいました!」っていう正面突破です。物理的に難しいだろうと思っていたので“当たって砕けろ”だったのですが、編集者が砕けずに帰ってきたんですよ(笑)。表紙をお願いするために好きになったわけではないけど、いろんなところに自分の“好き”があってよかったなと思いました。
――常にアンテナを張っていて、気になったことは深掘りするということですよね。
確かに、たとえば「せかいいちのねこ」を見たときも、かわいい絵本だなという感想だけでは終わらなかったです。この作家さん、すごいな! と思ったから新刊が出るたびにチェックしていたら、あれよあれよとGUCCIとコラボをしていて。俺の感性とGUCCIは合っていたんだね、って思いました(笑)。
――今回に限らず、加藤さんが小説を書くことで読書の間口を広げたいという思いもあるのでしょうか。
それはめちゃくちゃあります。僕が小説界に迎えてもらえたのは、その仕事をするためだと思っています。実際に「加藤さんの本を読んで読書が好きになりました」という声をいただいたこともありますし、微力ながら力になれたらと思います。そのためには面白い本を書くのが絶対条件なので、高いハードルを超えていかなきゃいけないんですけどね。僕は小説を読まないことが不幸だとは思っていないし、もしかしたら読まない方が幸福なのかもしれないと思っていて。野球が好きじゃない人に野球を見ろと言っても仕方がないよね、っていう。面白くない試合も、面白くない本もあるかもしれない。でも本からしか得られない面白さや喜びって、やっぱりあると思うということは言いたいかな。だから本を読まないと決めつけずに入口になる本に出会ってほしいし、その入口になれたらうれしいなという気持ちがあります。
――アイドル、小説家として活躍するほかに、音楽ライブではファシリテーターを務め、5月に公開される短編映画の監督も手がけています。ご自身のXのプロフィール欄にも書かれているように加藤さんが8人いるとしか思えないので、時間をうまく使うコツを教えていただきたいです。
よく聞かれます(笑)。でも掃除とかは全然していないですね。汚部屋ではないけど削っていくのはそういう時間になってしまうので、来世は“#️丁寧な暮らし”をしたいと本当に思っています(笑)。そうは言ってもゲームもしているし、友達とお酒も飲むし……逆にみんなは何をしているんですか? 僕はボーッとしている時間がないんですけど、みんなはボーッとしているんじゃないですか⁉
――はい、確かによくボーッとしてしまいます。
ちょっと(笑)! 僕は今日一日取材を受けてるんですよ!? というのはもちろん冗談ですけど(笑)、周りの人からは僕の体力は異常だと言われますね。健康に生んでくれた母と父に感謝です。とはいえ、今がピークかもしれないな、とは思っていて。野球選手の引退は30代前半が多いように、体力的な限界というものがありますからね。アスリートではないですが、健康に気をつけて精神と脳のピークをどうやって先に持っていくか。……などなど考えていると、ボーッとしている時間はありません(笑)。
――健康のために気をつけていることはありますか?
よく食べ、よく寝て、よく遊ぶ。これ以外に道はなし、だと思っています。自分ができているわけではないですが、肉、魚をバランスよく食べて、いい油や食物繊維を取ることも大事でしょうね。
――ありがとうございます! 「推し楽」ではご登場いただく皆さんに、ご自身の最近の“推し”について伺っています。最近、加藤さんが推しているものを教えてください。
う〜ん、何だろう。これから推す予定の映画でもいいですか? (松村)北斗が出ている「ファーストキス 1ST KISS」。僕の短編映画を手伝ってくれたプロデューサーの山田兼司さんが試写に誘ってくれたのですが、すでに見たという人から聞く評判があまりにもよくて。松たか子さんにもNEWSのアルバムで朗読していただいたことがありますし、映画を見るのを楽しみにしています。あまりにもみんなが北斗のことを褒めるので、うらやましいなという気持ちもありますね(笑)。
取材・文:細谷美香
写真:鳥羽田幹太(マガジンハウス)
ヘアメイク:KEIKO(Sublimation)
スタイリング:吉田幸弘
1987年7月11日生まれ。大阪府出身。NEWSのメンバーとして活躍しながら、2012年に「ピンクとグレー」で作家デビュー。「オルタネート」で吉川英治文学新人賞、高校生直木賞を受賞。同作と「なれのはて」で直木賞候補に。2022年には舞台「染、色」の脚本で岸田國士戯曲賞候補にも選ばれた。そのほかの作品に、エッセイ集「できることならスティードで」、能登半島地震支援チャリティ小説企画「あえのがたり」など。4月より、主演舞台「エドモン〜『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男〜」の2年ぶりの再演が決定している。短編映画プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS Season7」の「SUNA」ではAぇ! groupの正門良規を主演に迎え、自身も主演、監督を務めている。
2025年2月26日(水)発売
マガジンハウス刊
大学入学のために博多から上京したが、鬱々とした日々を送っているあや。大学で同級生のまりなと出会ったことで、思いがけない事件が起こる。和食の料理人の師弟の過去、兄弟間の愛憎、元夫婦の思いなど、いくつもの物語の先に待つものは……? ミアキスとは犬と猫の祖先と言われる動物。ミアキスから分岐して生物が進化していくように多様な人物たちが現れ、壮大なシンフォニーを紡いでいく。2018年から2022年まで全16回にわたって雑誌「anan」で不定期連載されていた「ミアキス・シンフォニー」に大幅な修正や加筆を加え、愛とは? という問いを描く新たなる小説として刊行。
©末長真・マガジンハウス
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