2024年10月10日 13時30分
インタビュー
2024年10月10日 13時30分
インタビュー
“我が子”である「選択」について真摯に語ってくれた岩谷翔吾さん
THE RAMPAGEが幻冬舎とタッグを組み、12カ月連続でメンバーをフィーチャーした書籍を刊行する企画「GL-16〜THE RAMPAGE BOOKS〜」。その第4弾、岩谷翔吾さんの作家デビュー作となる「選択」が10月10日に発売されました。
高校の同級生で、以前より親交の深い俳優の横浜流星さんが原案を手がけ、4年かけて作られたという本作。2人の間に一体どんなやり取りがあったのか——。ライブを終えたその足で横浜さんの家を訪れるなど、寝る間も惜しんで執筆したという岩谷さん。制作の裏側や、作品に込めた思いなど、大事な小説家デビュー作についてたっぷり語ってくれました。
——今回、小説「選択」を出版されることになった経緯をお聞かせください。
この「選択」という作品に関しては、4年前からずっと少しずつ書きためていたものなんです。今回、こうして作家デビュー……というとおこがましいですけど(笑)、小説を出させていただくことになって思ったのは、デビュー作は自叙伝っぽくしたくないなと。完全フィクションの作家としてちゃんと名乗れる、名刺にできるような一作を作りたいなという思いがあったので、この「選択」をデビュー作に選びました。
——以前、脚本を書かれた「さくら舞う頃、君を想う」も小説版は書き上がっているというお話でしたが、やっぱりちょっと違ったんですか。
あれは、やっぱりどちらかというと自叙伝に近いんですよね。自分のポリシー的には、どうしても“アイドル本”みたいな色目で見られたくないなというのがあって。「選択」は冒頭から殺意むき出しで、そういうものにはなっていないんじゃないかと思います。
——リリース資料に「冒頭の文章を一行読めば、僕の作家としての覚悟を理解していただけると思います」というコメントがありましたが、やはりその一行には時間を掛けられたのでしょうか?
そうですね。ラストから書き出して、その後に冒頭をどうしようかと考えていったので、最初の一行というのは、変更に変更を重ねた末に出たものです。でも、書き始めたら速かったですね。準備には時間をかけたんですけど、実際書き始めたら、頭の10ページは2、30分ぐらいでパーッと書けました。そのときの感情のまま書いたので、逆に手を加えないほうが温度感が伝わるなと思って、そこからほぼ書き直していないです。
——横浜流星さんが原案で、4年かけて考えられた作品とのこと。出来上がるまでの過程についてお聞かせください。
流星とは高校の同級生で、若い頃から苦楽を共にしている仲なんです。何年か前、一緒にいるときに「いろんな役を演じてきたけど、どういう役が一番楽しかった?」とか、「どういう役をやりたいの?」みたいなことを何気なく聞いたんですね。そうしたら、その答えがめちゃくちゃ面白くて。そこから着想を得て、この作品が生まれました。
——横浜さんはどういう役をやりたいとおっしゃったんですか?
簡単に言うと、“崩れ落ちていく役”。汚く落ちていくっていう……でもそれってすごく人間の本質だなと思って。彼はイケメンなので、どうしてもきれいな部分を切り取った作品や役を求められがちだと思うんですけど、全然違う役をやってみたいと言っていたんですよね。そこから、今回の主人公の亮というキャラクターが生まれて、自分の中でも物語が組み立てられていきました。
——それを横浜さんにお話しして、具体化していったのですか?
はい、流星と話していく中で、どんどんできていきました。流星は本当に一流なので、自分が演じるところも全部見えているんですよ。最初は主人公像だけだったんですけど、しだいに作品全体をプロデューサー的な視点で俯瞰して見るようになって。なので、例えば、冒頭の歩道橋のシーンは流星の家で書いていたんですけど、彼が流れをすごく細かく説明してくれるんですね。「ここで亮が胸ぐらをつかんで、右に振り返る」とか。
——そんな細かいところまで!
そうなんです。だから、自分はそれを言語化するだけでした。僕も流星も、昔から一緒にいて、同じ映画を見て、同じ本を読んで、お互いに刺激し合っていたので、 ビジョンが一緒というか。流星がポロッと言った“1”の一言も僕は“10”で解釈できるんですよね。
——「あの映画のあのシーンみたいに」というのが通じやすいのですね。
そうです、リファレンスが一緒なので。「あれね」「OK、OK」みたいな感じで、2人で一緒に作り上げていきました。流星は国民的な俳優になったと思うんですけど、その役作りの一端が垣間見れて、自分もめちゃくちゃ勉強になりました。役に入り込むというか、憑依するというか……演じる役の人格を形成していく過程が、小説で人物像を固めていくのとすごく似ていたんですよね。流星としても、話し合っていく中で、どんどん物語ができていったみたいで。僕が書いたセリフを流星に送ると、LINEだと3スクロールしないと読めないぐらいの長文で返事が返ってくるんです(笑)。“何ページのここのセリフはこう変更”みたいな指示とか、“地の文、これはこういうこと?”みたいな疑問とか。僕がそれを反映して修正したものをまた見せたりとか、そういうやりとりを繰り返しながら進めていきました。
——お互いにお忙しい合間を縫って……ですね。
THE RAMPAGEのライブの仙台公演が終わったあと、キャリーバッグを持ったまま流星の家に行って、朝方5時6時ぐらいまで2人でずっとしゃべりながら作業したこともあったり(笑)。2人のスケジュールが同時に空いているときとなると限られてくるし、寝る間を削るしかなかったので、そうやって進めていきました。
——脚本はこれまで何本か手がけられてきた岩谷さんが、今回こうして小説を出版物として世に出すのは初めてになります。1冊書き終えられてみて改めて感じた、小説ならではの難しさとはどんなところですか?
地の文で余韻をもたらしたり、心情表現できたりするのは小説ならではで、それは映像作品では映し出せないよさだなと思っています。だからこそ、めちゃくちゃ難しかったですね。でも、この作品に関してはちょっと映像の脚本っぽさを意識しているんです。僕と流星の中では2時間の映画だと思っていて、だからあえて細かく描写していなかったりする。大御所作家の方からすると、もっと描写を細かくしたほうがいいとか、プロセスを丁寧に積み重ねたほうがいいとか、いろいろ思うところはあるかもしれないですけど……20代の僕らとしては「今の若い感性に任せてみるか!」って。現に、TikTokのショート動画ですら、30秒あると「長いな」と感じてしまうのが今の若者ですから。
——ちょっと荒削りでもいいか、ぐらいの。
だいぶ荒削りだと思います(笑)。もっと丸くして、伝わりやすくしたほうがいいかとも思ったんですけど、本を読んだことがない方でも読めるページ数にしたくて。文体も難しくしていないので、これならあんまり読書慣れしてない方でも面白く読んでいただけるんじゃないかなと思います。
——先ほど、頭の何ページかは一気に書き上げてあまり修正もしていないとおっしゃっていましたが、編集者さんから指摘というのはあったりしました?
めちゃくちゃありました(笑)。ほぼ構想の段階から入っていただいて、いろいろディスカッションしながら、ご意見もいただいて。流星の意見も聞きつつ、編集者さんの意見も聞きつつで……(ためらいながら)その、僕が間に挟まれたというか……あはは! いや、指摘していただいて、ありがたかったです(笑)。
——それは大変でしたね(笑)。客観的な指摘で、新たに気づいた文体のクセなどありましたか?
はい。文章にリズムを持たせるために「亮は〜」「匡平は〜」って、主語をよく入れていたんですけど、それはめちゃくちゃ削りました。自分のリズム的にはそっちのほうが乗るんですけど、あまりに多くて。100個以上取ったんじゃないかな。
——主語といえば、今回三人称で書かれていますけど、それも迷ったりしましたか? 亮の一人称で「俺は」と書いていく手もあったかと思いますが。
悩みましたね。亮と匡平、2人の話にしてあげたいなというのが大きかったので、三人称を選んだんですけど……。亮は、書き始める中でもうビジョンがあって明確なゴールがあるので書きやすかったんですけど、匡平を膨らませるのがすごく大変で。なので、途中で匡平をあきらめて、亮のみを主人公にして一人称でいくかと迷ったときもありました。でも、やっぱり亮だけの“選択”ではなく、匡平にとっても“選択”があって。亮だけ1人突っ走る選択よりも、対照的な人物がいることによって描かれる選択のほうが、自分としても伝えたいメッセージにより近かったので、やっぱり三人称で書こうと腹を決めました。
——書く上で、どなたかにアドバイスを仰いだりされたのですか?
帯の文章も担当してくださった三浦しをんさんには、プロットの段階から見ていただいていました。授業料払ってでも聞きたい人がいるだろうなっていうぐらい、貴重なアドバイスの数々をいただいて。迷ったときは、しをんさんのお言葉を読み直して執筆を進めていきました。しをんさんは、僕の書く上での原動力となっている方で、自分が車だとしたらガソリンがしをんさん、というぐらいの存在です。「さくら舞う頃、君を想う」の舞台の時にいただいたお祝いのシャンパンを、今も執筆する机の一番目立つところに置いていて。今回、行き詰まったときにはしをんさんのお言葉を思い出して、「よし!」と切り替えて頑張ることができました。
1997年3月11日生まれ。大阪府出身。2014年、「EXILE PERFORMER BATTLE AUDITION」を受け、合宿審査で落選するもTHE RAMPAGEの候補メンバーとなる。後に正式にTHE RAMPAGEのパフォーマーとなり、2017年に1stシングル「Lightning」でデビュー。俳優としてドラマや舞台への出演、朗読劇の脚本や演出、読書情報誌「青春と読書」での連載など、多方面で活躍中。日本将棋連盟三段や、実用マナー検定準1級の資格を取得するなど趣味が多いことでも知られる。プロデュース作品に、朗読劇「STARTING POINT」('22年)、朗読劇「さくら舞う頃、君を想う」('23年)。2024年3枚目シングル「Endless Happy-Ending」が10月30日発売。
2024年10月10日(木)発売
幻冬舎刊
「もう、うんざりだ。殺す。絶対殺してやる」。包丁を忍ばせ、家を飛び出し、亮は走っていた。母に酷い仕打ちをした、父親を探しあて殺害しに行くために。息も絶え絶えに走っていた。そしてこれまでの世の中の不条理を憎んだ。しかしその途中、亮は歩道橋から身投げしようとしていた中学生を助ける。それは幼なじみの匡平だった。やがて、どんよりした巨大な社会に飲み込まれていく二人の少年。十数年後、行き場を失った亮は、ずるずると特殊詐欺実行犯グループに身を置くことになる――。この国を覆う、息もできなくなるほどの暗い圧迫感を描ききった、新たな物語。日々を懸命に生き抜いてきた二人が直面した非情な現実、そしてその先に見えたものとは。俳優の横浜流星が原案を手がけた、THE RAMPAGE・岩谷翔吾の小説デビュー作。
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